K.K.
@honnranu
2026年5月23日
読み終わった
もらった
ラノベ
ライトノベル
KADOKAWA
ゼロ年代
角川書店
桜庭一樹
富士見ミステリー文庫
辻原登
桜庭一樹の代表作として度々名前の上がる作品。私の読んだ版は200ページほど。四時間くらいで読んだかな。
都会の人が、田舎に作った方がいいと思う全て(原発。刑務所。少年院。精神病院。それから自衛隊の駐屯地。p.18)がある町で生活する山田なぎさ。中学二年の夏休み明け、人魚の姫を自称する美少女海野藻屑が転校してくる。一月後の十月三日、世界中から人魚が集まり卵を産むなどとホラ話ばかり聞かせる海野藻屑にうんざりしつつも、山田なぎさは仲を深める。しかし山田なぎさはひょんな事から、紫色だったり腐ったような緑色だったり赤黒かったり、拳の形の痣が海野藻屑の体に浮かび上がっているのを見てしまう。
安心を知らない子供達の一月あまりの物語。最近こういう、無闇に抽象的な事を書き散らし漠然とした不快感にばかり敏感な語り手といった系譜の作品に触れていなかったので、懐かしい心の動かし方をした。今の子供が読んで響くとも思いづらいので、ゼロ年代だなぁ。
小説としては、どんでん返しやトリックがあるかと思っていたものの、そんな事はなく、起こるべき事が起こるべくして起こる。解説に「物語には、学んで身につけるような特別な技法は本質的にあり得ない。出来事と出来事、描写と描写がどのように連結されようと、大事なのは、まず語り手の精神に生まれつき備わっている何かなのである。」とある。確かにこの作品にはその何かは備わっているかもしれないけれど、恐らく現在にこのクオリティの原稿が編集に届いても刊行されないだろうなという肌感がある。アイデアとしては短編ボリュームは中編。書き振りは軽妙な反面レトリックに乏しい。結論の決まっている筋書きを長編にするなら、もう少しキャラや描写に厚みを持たせる方がカタルシスが強まる。全体として習作の感か。多分挿し絵ある方がいい。経験として、読むべき時を逸してしまった。
赤朽葉家や少女七竈も気になるので、いつか読みたい。