柴犬 "小説" 2025年3月22日

柴犬
柴犬
@storyseller
2025年3月22日
小説
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野崎まど
本を読むことは、唯一人生で続けていることである。その一方で私に小説を書く才能はなく、ただ思ったことを書き連ねることしかできない。それこそ、本を読んで得たまだ足りない語彙を使って、自分の感情に近しいものを選んで羅列するだけである。人生で本を読んでいて良かったことは、センター試験で問題文を読む時間が間に合わなかったことがないこと、小論文でつまづいたことはないこと、その程度だ。 アプリコットを見た時に有川ひろの植物図鑑で「杏」という女の子が出てきたな、と思い出すこと。梅毒の話題を見聞きするたびに二宮敦人の最後の医者は桜を見上げて君を思うでハイターで舌を洗浄していた男子学生を思い出すこと。夕食に蕪の味噌汁が出れば、伊坂幸太郎のオーデュボンの祈りを思い出し、新作の楽園の楽園も良かったな、と思うこと。太宰治の話題で、野﨑まどの小説を思い出すこと。このようなことは、私の日々で当たり前のことで、わざわざ人に伝えることも、その感覚を拾い上げることもない。それで、いいのではないか。それでいいと、肯定してくれる小説だった。暖かくて、私はこの本に出会うために本を読んでいたと思った。 文章の構成も素晴らしく、語彙も圧倒的で、読んでてすげ〜の一言であった。場面転換のスムーズさ、体に文章が流れ込んでくるアノ感じ。ごめん、まだこの本を褒めるには私の語彙が足りてません。読みたくないなと思った。この怒涛の文章を読み切ることが勿体無いと。終わるの嫌だな〜と思いながら読み進める本ほど、堪らないものはない。圧倒された。圧倒されて、この人も小説が好きなのだと思った。この本を書いてくれて、小説があってありがとう世界。
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