
ぽかり
@popopocari
2026年5月23日
赤い月の香り
千早茜
読み終わった
小川朔の時間が進んだ感じがしてとてもとても良い。
彼が感じる匂いを、文字を通じて確かにこちらまで感じることができた
文章から漂うのは、満の過敏な反応、怒り、そしてそこに滲む諦念
前作で一香に出会う前の彼なら、きっと満を自分のテリトリーに迎え入れようとはしなかったはずだ
『透明な夜の香り』の終盤、小川朔は自分の意志で他者に興味を持ち、意図的に一香を傷つけた。あれは彼なりの「執着による加害」だったのだと思う。
その経験があったからこそ、同じ施設で育った満の存在が思い出されたかな。そうして、知的好奇心から、「正しい執着」を知るために満を雇った彼の行動力には驚かされた。
これまで描かれていた小川朔のペルソナとは一見一致しないようなその行動に、彼が「無機物から有機物へと変容した」ような感覚を覚える。人間らしさ、すなわち情緒が育ってきている。
機械的だった印象の彼に、ちゃんと血が通っていく。知らないものを知りたいという欲求を抱き、最後には自分なりの答えを出す。
彼が出した答えが「赦し」か。
聖書で使われているようなイメージがあって、これを「愛」の一言でまとめるのは野暮だけれど、今はまだ他の言葉を持ち得ない。でも、きっとそういう毛色の解釈なのだろう。最高だ。
一香や満の目を通して、彼の少しの過去と現在を追想させてもらった。何より、小川朔というひとりの人間の、著しい成長を強く感じている。

