
碧衣
@aoi-honmimi
2026年5月22日
砂の器 下
松本清張
読み終わった
突然死した男が倒れた場所にあった失業保険の統計表、ある女の奇妙な引っ越し、そして新たな死。刑事は伊勢、北陸、大阪で被害者の足取りと犯人の足跡を追う。
彼は保護された安全な場所からなぜ、危険な綱渡りを選んだのか。読み終わった後にそれについて考えてみると作中には書かれてないが、その場所は彼が彼でいる限り決して心から安心できる場所ではなかったのではないか。
だから戦後の混乱に乗じて、新たな自分を獲得した後に己の才能で若くして成功を収めた彼の見えざる思いや、それ故の保身を安易に非難することはできない。同時に彼の犯した罪を擁護することもできない。
作中で印象深かった東京の華やかな世界と北陸の貧しい農村の残酷なまでの対比。それは彼も見たであろう景色であり、どんな思いで彼はそれらを見ていたのだろう。