
紫嶋
@09sjm
2025年3月22日

傷を愛せるか 増補新版
宮地尚子
買った
読み終わった
著者は精神医療の専門家で、言うなれば人間の「心の傷」に関するプロである。
けれどもこのエッセイにおいて、著者は決して「心の傷を克服すべき」だとか「強く前向きに生きるべき」だとか、そんな押し付けがましいことは綴らない。
むしろ、人の心の弱さや傷つきやすさ、一度付いた傷の癒し難さを誰より知るからこそ、それを受け入れた上で、静かで柔らかな眼差しでじっと向き合っている。そして周囲や世界に溢れる様々な傷を通して、自身の心や過去にも想いを馳せる。
そうして綴られた、心の痛みに寄り添った素直な文章の数々には、「人間が傷を抱えながらどう生きていくか」のヒント…あるいは祈りが散りばめられているように感じた。
読みながら自然と心身の強張りがほぐれていく本だった。己の心の傷が疼いて苦しい時にこそ、繰り返し読みたい一冊になった。





