チョム "私たちが星座を盗んだ理由" 2026年5月24日

チョム
チョム
@abb_20260521
2026年5月24日
私たちが星座を盗んだ理由
大学生のとき東京駅の書店で平積みされているのを手に取った。メルヘンでかわいらしい装画に「すべてはラストで覆る!」と書かれた帯、いわゆるどんでん返しもののイメージがちぐはぐで目を引いた。さらに裏表紙のあらすじにて「ラストの数行で残酷に反転する衝撃は、快感ですらある。」と言い切られており、鮮やかなどんでん返しものが5編も読めることが確約されている。とんでもなく涎を誘うアシェットデセールである。電車移動時に読むのにうってつけの短編集、買わない手はない。 やはりどんでん返しものはいい。初読の衝撃に勝る再読はないが、過去に読んだことがあっても記憶が朧気にさえなっていれば、書かれているものをそのまま受け入れて読み進めてきた時間が、最後の一行、あるいは数行で再び裏切られる。 当時のわたしは最初に収録された『恋煩い』の、結末に向けてジワジワと確かになっていく「信じたくない予感」が最後の一行で確実なものとなってしまった、あの、心臓が凍りつくような読後感を忘れることができず、その後の4編を読んでも最初の一本が最も衝撃的だったことを今でも覚えている。 そして再読してもその恐れは変わらず、このときのセリフが、この行動が……と侵食してくる思春期の心の闇に恐怖を覚えずにはいられなかった。どうか主人公が負けずに幸せになれますようにと願うばかりである。 『妖精の学校』は当時もわけがわからなかったし、最後の一行を調べて正体が判明してもわからないままだったし、再読したとてよくわからなかった。作者の意図に最も近そうな考察をネットで見つけてやっとすこし納得できたくらいである。(※) 『嘘つき紳士』の鮮やかな仕掛けには主人公同様まんまと騙された。『終の童話』はファンタジー世界観の残酷な事件をミステリーとして解決させる物語構成のうまさと、想い人への主人公の甘く切ない想いの行き着く先の儚さが、見事なバランスで調和していた。 表題作『私たちが星座を盗んだ理由』は、「星座を盗んだ」という部分のトリックが知識に依ってしまうのが消化不良だが、「盗んだ理由」における三角形を描くすれ違いが切ない。『恋煩い』の主人公にまだ希望があることに反して、こちらの主人公はあの夏に永遠に囚われたままになってしまうのだろう。 (※)黄金の羊毛亭/SAKATAM様 https://www5a.biglobe.ne.jp/~sakatam/book/seiza.html 5編すべての感想と考察が同じページに連続して記載されているため、未読の方は5編すべて楽しんでからこちらのページを参照してください。
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