時雨崎 "闇の奥" 2026年5月24日

闇の奥
闇の奥
ジョウゼフ・コンラッド,
黒原敏行
「征服というのはほとんどの場合、われわれとは膚の色が違い、鼻がちょっとだけ低い連中から土地を巻きあげることで、見て気持ちのいいものじゃない。」 これを植民地支配する側の国の人間な台詞とするの、攻めてる。 イギリスの小説家による植民地支配の闇を、主人公マーロウが過去を振り返る形で仲間の船乗りたちに語りかける形式の冒険譚。 暗く重いテーマだけど新訳はあくまで仲間に武勇伝やら思い出話やらを聞かせるような形式の軽い口語体なのでかなり読みやすい。ヨーロッパ、アフリカの読者であれば自国のことであるという当事者としてもっと解像度を持って真に迫ってくるのかな? 植民地支配について、啓蒙してやった/文明化してやった、と捉えることを馬鹿馬鹿しいとばっさり切って捨て、植民地で原住民を搾取し狂った人間を一人称の語りで生々しく描写している。 この時代のイギリス小説としては衝撃的だったのかな。 現代で(しかもアジア圏の読者である以上は他人事として距離があるのに)攻めてると思わせるぐらいには大胆に踏み込んでいる。 つい最近、文化相対主義について聞いたばかりだったのでヒェーッてなった。現代人である自分らは「文明的に優れている/野蛮で未開である」で序列をつけることが大きな誤りであることを知っているけれど、でもそんなお綺麗な言説は植民地の闇に分け入ったことがないから何の気負いも無く言えるのかもね。
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