
蛾のおどり
@Nachtfaltertanz
2026年5月24日
狐花 葉不見冥府路行
京極夏彦
読み終わった
「この手は汚れておりましょうか」
狐は両の手を突き出す。
男は狐に向き合った。
「貴方は勘違いをなさっておられる。私は、私が法を守るのだと申し上げております」
「何と仰せか」
「私が守ると申し上げているのです。非を厭うのも理に倣うのも、それは私。凡ては私のことで御座います。人は、理を見失えば惑わされ、操られ、非に屈すれば倫を忘れ、心を盗られまする。さすれば世を見誤る。行く末が曲がる。時に死を選ぶ。斯様な迷妄に囚われた者を夢から覚ますがー私の仕事」
「それが憑き物落としと言うかえ」
「然様に御座る。目の前に、迷い騙され惑わされ、落ちずとも良い死の淵を覗いておる者が居たならば、背を押すのではなく手を引き思い留まらせる。非を厭い理を重んじるなら何方様でもそうすることでありましょう。それだけのことに座います」(p.16)
