キイチ "ある大学人の回想録: ヴィク..." 2026年5月24日

キイチ
キイチ
@Mt_1924
2026年5月24日
ある大学人の回想録: ヴィクトリア朝オクスフォ-ドの内側 (SUPモダン・クラシックス叢書)
5/22-24 久々に中身が全然分からないまま購入したけれど、期待以上に面白い1冊だった! オックスフォード運動や19世紀中頃までのオックスフォード大の歴史・状況、諸々の動きに関与する人物たちなど、パティソンのキーになる要素について全然知らないまま読んでしまったので、これ1冊を一読しただけで理解したとは全然言えない。 当然ながら自伝を鵜呑みにするわけにはいかないし、解題にもある通り書かれていないこと・僅かに示されているだけのこともあれば詳述していない時期のこともあるので尚更。 書かれていること、起こった出来事、思想的な部分を理解しているとは言えないけど、 訳者の言葉を借りるなら「象牙の塔の内幕を知るための第一級の資料」「十九世紀イギリス知識界の動向を知る」ものとして面白かったし、パティソン本人が研究対象として十分面白そうだと思ったのも昨日までに感じた通り。 コレッジのトップまでいった人ではあるものの、ド派手な人生! というわけでもなし。 後悔したり、要領が悪かったり、社交苦手な部分がずっと残ったり……それなのに面白かった理由のひとつは、彼の要領の悪さに共感を覚えたからだろうなあ。 極端な風潮、「未消化な命題の集積を本物の知識と思い込まされている」人間のあり方、「学問を深く究めてはいないがまったく無知でもないという階層(これはカントからの引用)」……身につまされる言葉も多い。 最後のは、今なら具体的には自分なりに知ろうとした挙句反ワクや陰謀論にハマってしまうような層が当てはまることではあると思うけれど、やや拡張した自戒として。 宗教は自分の拠り所ではないけれど、かつてある場所で宗教が占めていた場所に今現在入り込みあるものについて、思考を止めず、きちんと吟味していかないといけないのは変わらないね。 もうひとつ、パティソンが引用していた中で好きだったチャールズ・ニートの言葉――「人類は、自分たちに恩恵を与えてくれた先人に、感謝を込めた好奇心を抱く義務を負っている。学問においては、その借りを返すのが我々の役割だ。返済には大した出費を要しない。それどころか、返済することで我々はますます豊かになる。……」(p.204) 自分もささやかな恩返しをしたい人がいるし、この1冊の回想を読んだ今、パティソンその人も「感謝を込めた好奇心」を向けられてほしい。 それにしても、本気で幾人もに借りを返そうとするなら、普通の出来の人間には人生はあまりにも短い! 確かに与えられた恩恵に比して出費は少ないけれど、調達には時間がかかる……せめてこの人には精いっぱいを返したいと、そう思える人が見つかったのはすごく幸せなことなのだろうなあ。 他人の人生や経験を無理に自分に引き寄せようとしすぎかもしれないけれど、身勝手ながら励ましと反省を得ることにする。
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