
読書するはる
@surusuru
2026年5月24日
正欲
朝井リョウ
読み終わった
マジョリティの考えるマイノリティに当てはまらない人への解像度が高すぎて、途中からは朝井さんも似たような感性を持っているのかな〜なんて考えてました。結果的には、生物学的男女2人が生活を共にする中でそういうシーンがあったので、少しはマジョリティ側に寄り添った話にしてくれたと感謝してます。
(たぶん、多くの人はそうなって欲しいって考えてたんじゃないですか?もしそういうシーンが2人の中でなかったらもっとこの本に対する不安感みたいなのは大きかったと思います、そういう不安を一部だけでも取り除いてくれたことへの感謝です)
にしても寺井はいい仕事をしてますよね、この人の話が1番自然で唯一のオアシスでした。まあこの本で読みやすいってことは、マジョリティ側に受け入れやすいってことと同値なのでここが読みやすかった自分はやっぱり寺井に共感できることが多かったですね。レールから外れることへの忌避感が確実に自分にもあるので、それを体現してくれてありがとうって感じです。
それから神戸ちゃんもいい子ですね〜って感じで、もしかしたらぼくが女性ならこの存在がオアシスになるのかなって思います(だいぶ性差別的な表現をお許しください)。今の社会はルッキズム真っ只中ですからね、特に学生は。コンプレックスやらトラウマやらを後天的に抱え込まされた人間、マジョリティの考えやすいマイノリティはなかなかに社会に溶け込んでて締めを飾ってるのも未来が明るそうな感じがしていいなーって思います。
あの2人にはよく頑張った敢闘賞!って感じですね。後半に行くと、もっと話せよ!みたいなことをどうしても考えてしまうんですが、結局そういうのは自分が読んでて気持ちよくなれる本にしたいからなんだよなーって気づかされましたね。完全に2人を理解できてるわけがないんですけど、辛い孤独がようやく終わったところなのでお幸せに。
諸橋くんは確かに、惜しい!あと少しで違う形になっていたかもしれない、と期待できるようなシーンもあったんですけど、これまでの積み重ねを考えるとそんな簡単にはいかないでしょうし、やっぱり神戸ちゃんには荷が重いよなーと思ってしまいますね。けど彼は繋がれたので、もしかしたら少しはよくなるかもしれません。
他の人はよくいる人たちなので触れません。自分が1番触れたいのは寺井ですね。さっきも触れたんですが笑
これはもう寺井が悪いとかいう次元ではなく、こういう人が量産できる社会になってしまってるのが根本に近いと思うんです。みなさんは読んでて、寺井が戦犯というか理解のない堅物みたいな印象を抱きませんでした?(というかそういう風に読者を感じさせるよう設定してると思うんですが)それでも皆さんに1番近い考えを持ってるのは寺井だと思うんですよね。どうします?不登校の身内が出たら。ぼくだったらまず甘えだと思いますよ、学校に行くのが面倒くさいとかそういう次元で考えちゃいます。もっと原因が辛いものだったとしても学校は行けるだろって自然に考えてそれを強要するでしょうね、まさに寺井です。けど、行けない子っていうのは行きたくても行けないし、行けない自分に自分も困ってるんです。そういう理解って自分で経験してない限りは、他人に教えてもらって、受け入れるしかないんです。だけど、寺井はそういう環境にない、どころか自ずからそういう理解を怠ってますよね。ここからは完全な憶測になってしまいますが、彼は単純に現実を受け入れたくなかったんでしょうね。職業柄レールから外れることが犯罪への一歩であるかのように受け取ってしまう性質があったため、息子が不登校というだけで自分もレールから外れるような感覚に陥った。それどころか息子や妻は学校に通わないことを受け入れ始めていく、常に正解を追い求めてきた彼にとってとても考えられない、それが正しいはずがない。そういう具合に段々と現実を受け入れられなくなり、妻と右近の関係、家族からの疎外感、自身が持つ性癖のバグに対して考えることを放棄した結果が、罪のみを意識する断罪者で凝固した。その末に2人の繋がりの強さでトドメを刺されて、思考停止です。
ここまで来ると哀れな人だなって感じてしまいます。不器用というか、もう自分でも何をどうしたらいいのかわからないって感じで、とりあえず現状維持に走ってますよね。だからまあ、レールに残るのがぜったいじゃないし、現状に甘んじて自分を変えない人間がこれからは淘汰されていくという示唆なのかもしれないですね。


