9zilla
@whi1e
2026年5月26日
狂気の山脈にて
H・P・ラヴクラフト,
南條竹則
『時間からの影』読了。
前作『狂気の山脈にて』が空間的な恐怖なら、今作は「時間と自我」の恐怖。文句なしにやばい傑作。
単にバケモノに肉体を乗っ取られたという話にとどまらず、精神交換のディテールが明かされるにつれて、「自分を乗っ取ったのは誰か」ではなく「自分が誰かを乗っ取っていたのではないか?」、あの暗闇の足跡も自分なのでは……と、自分の存在の境界線が崩れていくような知的な困惑とゾクゾク感がたまらない。
そして何より、ラスト一行の破壊力。数億年前の古文書に見つけた「自分自身の筆跡のアルファベット」という、悪夢を現実に変えてしまう最悪で美しい物理的証拠に鳥肌が立った。ラヴクラフトのSFホラーの最高峰だと思う。

