
歯
@zettaigokakuc
2026年5月27日
死にたくなったら電話して
李龍徳
読み終わった
『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』に備えて、同著者の有名書を読みました。
2000年代のニヒリズムの極地 現代の男女の心中物語
初美の、「魔女裁判で魔女を好きに裁いて殺した裁判官も、何も罰されることなく死んだ」という話に悶々とする。世の中には、クズみたいな人間が何人も生きている、という考えには同意する。そこで無気力になるのも分かる。
読者は、文章から主人公の身体に入り込み、初美の価値観に吸い寄せられる感覚(恐らく、作中の登場人物達と同じように)を、味わう。次第に性欲も食欲もなくなっていく。初美の台詞は基本的に長いのが特徴であるが、その文法は淀みなく端正で、的確な語彙に、関西弁のリズムが心地良い。そうして彼女が作中の人物たちに伝える言葉は、読者の私たちに伝わる。初美の彼氏、彼氏の友達、キャバクラの客、同僚、そして、私が、全員、初美に傾いていく。大きな引力を持ちながら、初美の生命力は尽きていく。
①どうして?と思うこと。終盤の、「車を買ったのに」という台詞がすごく気になる。諦めてなかったんだ、と思った。社員に送ったメールの内容を読んで察する通り、初美は生きたくて、徳山に近付いた?この人となら、生きたいと思えるかもと。でも、虚無感に勝てなかった。というか徳山が負けた。どんな人間が、初美の虚無に打ち勝てたのか?
②読み始め当初は、主人公の男を初対面からいきなり気に入る美しい若い女性の初美に対して、(またマニックピクシードリームガールもの?)と思った。読み進めていくと初美の底知れなさに好奇心がそそられて、次第に怖くなる。単純なヒロインでないことに気付く。
③2人とも外見が優れているという設定だったので、完全に没入は出来ず、やっぱりどこか冷めた目でいた。かたちが綺麗な人間の苦悩、縁が無さすぎる。腑抜け共、と思ったりもする。ここに書かれていることは、全く私の苦しみではないし、遠く離れた人間の話すぎて、そうですか、と、思う。2人とも壮絶な過去を送っている訳ではないというのが余計虚無感を増長させる。
ニヒリズムに負けてなるものかって思いました。絶望は美しくないです。