
ライツ社
@writes_p
2026年5月27日
時の辞典
岡野大嗣
読んでる
『時の辞典』は、「短歌集」というより、誰かの記憶のアルバムをそっと覗かせてもらうような本でした。
正直、短歌って少し難しいイメージがあったんです。でもこの本は、一首ごとに大きな事件じゃなくて、「なんでもない日の感情」が丁寧に掬われていて、読んでいるうちに自分の記憶まで引っ張り出されてきます。
特に好きだったのが、
「ファミレスは小さな足湯 近況をどこまでさかのぼって話そうか」
という短歌。
“ファミレス=小さな足湯”っていう感覚がすごく絶妙。久しぶりの友達と会った時の、微妙な距離感とか、話したいことが多すぎる感じまで伝わってきて、本を閉じてしばらく余韻に浸ってしまいました。
この本のおもしろいところは、「今日はどんな短歌かな」と日付で開けるところ。365首あるので、その日の気分や季節に自然と寄り添ってくれる感じがあります。流れていく言葉じゃなくて、「今日」という日にちゃんと留まってくれる。
あと装丁についても、かなり可愛いです。鍵のホログラム箔や、月ごとに紙の色が変わる仕様は、持っているだけで少し嬉しくなります。
短歌に詳しくなくても読めるし、むしろ「短歌ってこんなに日常に近いんだ」と思わせてくれる一冊です。誰かへのプレゼントにも、自分のための本にもしたくなる本です。


