@sotaono
2026年5月27日
p12
「<死ぬ自由が自分にはある。なにか具体的な不満があったわけではない。自分の意思で自由に活動できるうちに、皆の前から消えようと思う。探さないように。>」
p38
「<真賀田博士への返答>」
p54
「「あ、失礼しました。島田文子と申します。」」
p58
「「人類の知的交流とその蓄積のバックアップです。」」
p61
「「真賀田四季?」」
p66
「「おお、発見……。えっと、ψの悲劇。プサイですよね、これ……。」」
p141
「「私、ピンクになりたかったんですよ。」」
p142
「「八田先生が、生きている、ってこと。」」
p161
「ブランは皆から好かれていた。殺す理由なんてないだろう。そこで思い出したのだが、<ψの悲劇>の殺人が、毒殺だったこと。」
p165
「一年まえに、洋久がいなくなり、一昨日には、ブランが死に、吉野公子が亡くなった。そして、矢吹将太が救急車で運ばれる事態となったのだ。まさに、悲劇である。」
p176
「<島田です!>」
p183
「「神よ、我にプロトコルを。」」
p187
「「決まっているじゃない。吉野先生を殺したのは、貴方だからよ。」」
p189
「「簡単には説明ができないわけですよ。うーん、世の中ってのはね、もう、ぐちゃぐちゃなんだから。いやんなっちゃうからね。人間関係もそう。もうね、ちょっとしたことで争って、暴力沙汰になるじゃない。いい加減、もうやめてよねって、思うでしょう?どうしてみんな、こんなに憎みあったりするわけですか?私は、そこがわからない。みんなさ、もっと、自由に生きられないのかしら。人のことなんか心配しないで、自分の好きなことをすればってことなんだ、基本はさ。なんかね、ちょっと自分よりも誰かさんが楽しそうだ、誰かさんが良い思いをしてるって、そんなことで腹を立てて、意地はってさ、馬鹿みたいだよ。いえ、馬鹿なんだよな、みんな、マジで。どうしようもない馬鹿、馬鹿、馬鹿。やめてよね、そういうの……。」」
p195
「「貴方が何者か、という話です。」」
p197
「「ということは、二年まえに、私は生まれたのですか?」「そういうこと。驚いたでしょう?」「どういうことですか?」「貴方、自分が人間ではないことは理解している?」」
p198
「「普通の人工知能じゃないんだよ。人間の頭脳が取り込まれているわけ。」」
p199
「「八田洋久。」」
p208
「「あ、今のは失言かもね。ごめん、ごめんなさいね。そうじゃないの、こちとら、アナログだ、が正しいかしら。まあいいわ。どっちだって……。一度口から出たら、吸い込めませんからね。」」
p209
「「ドローンを飛ばさなくても、街にはカメラがいっぱいなの。特にね、公園は多いってわけ。悪いことをする奴が多いからさ。だけど、ドローンみたいに、上からは撮影しないから。警察はさ、上から見た映像を見ているつもりなんだけれど、それは、バーチャルなんだよ。処理されているだけ。そういうのに頼っているってことが、古い頭の奴らにはわかってない。ちょっと新しいものがあったらさ、便利だ、これからはこの技術だって、飛びつくだけ。失われたものに気づかない。そんなふうだから、あちこちで人災ばっか山のように勃発するわけだ。本当にデジタルを知っている者はね、この世界を過信しない。もっとさ、自分の腕を信じてる。」」
p211
「「エミナ・プサイ・タンドグルゥ!」」
p215
「「やるじゃんか。」彼女は私の膝を叩いた。「貴方さ、ロボットじゃないよ、もう……。」」
p217
「「私、今は、こんな美少女の姿しているけれど、実は、えっとぉ、もうすぐ百歳になるの。」」
p221
「「私が自分を韜晦しているとおっしゃるのですか?」」
p229
「「馬鹿言うんじゃないわよ。私は、島田文子です。きっちり個人の自覚を持っているんだから。」」
p229
「「まぁね……。いたらいけない?二人いてもいいじゃない。それに、だんだん別人格になるわけよ、違う人生を歩みますからね。大昔にさ、クローン人間でそんな間違ったイメージをみんな持っていたんだよね。あれに近いな。どっちにしても、すっかり人間、歴とした人間だってこと。」」
p229
「「人間なんですか?」「どこが人間と違う?私には違いがわからない。私自身にわからないんだから、誰にもわからないじゃない?そうでしょう?」「私は人間ですか?」「立派な人間だよ。自信を持ちなさいって。」」
p229
「「そんなの、ごくごく些細な問題じゃないの。充電が必要な人間なんて、病院へいったらうじゃうじゃいるじゃない。普通の人だってさ、端末の充電しなかったら死んじゃうかもしれないよ。そもそも、ご飯を食べることが充電なんだからさ。チャージって言ったら、同じこと。」」
p233
「「小説?<ψの悲劇>のことですか?あれが、なにか関係が?」「八田先生が書いたプログラム。」島田は言った。」
p233
「「もっとも、小説というのは表向きの木馬。」「木馬?」「そう。トロイの木馬。知ってる?」」
p240
「それなのに、ときどき湧き起こる疑問、興味、関心、違和感、そして懐かしさのような思慕の方が、なぜか愛おしいし、輝いているようにさえ感じられた。」
p240
「時間をかけて、私は自分を取り戻そうとしているのだろうか。だとしたら、これは成長と呼べる現象かもしれない。そうであってほしい、と願う気持ちも、存在するように感じられるのだ。気持ち?それは、どんなものだろうか?」
p240
「ばらばらに歩いているのに、お互いにぶつかることなく、人が流れていく。誰もが、自分の目的を持っていて、お互いに干渉せず、しかし、争うこともなく、自分の脚で歩いている。同じパイプの中を流れる液体のように見えるけれど、けっして混ざることはない。それぞれの目的を忘れることはない。そして、しだいに分岐して、それぞれ別の道へ向かう。最後はまた一人になるのだろう。一人から始まって、最後も一人になるのか。生きているというのは、結局はこの流れのことなのだ。私は、はたして生きているものといえるのか。」
p241
「私は意識を持っている、と意識できる。私というものを、疑うことなく、知っているのだ。私は、私には証明できる。私は、私だからだ。」
p243
「私は、二つの青い目に囚われていた。」
p245
「問う。教えてほしい。どうか……。私は何者か。ただ、問い続けていた。」
p248
「ただ<ψ>というマークをよく書いた。ペンと紙があると、その記号を繰り返し書いたそうだ。」
p256
「あれは、本当に美しい風景だった。澄み切った空気しか、私たちの周りにはなかった。どこまでも高い空の下。私たちは、手をつないで歩いたではないか。いつの間にか、目が霞んでいる。鼻水が流れていた。私は、泣いているみたいだった。」
p257
「私の記憶の中に、彼女は生きているのだ。たとえ名前を思い出せなくても、彼女との時間のすべてを再現できなくても、記憶はある。私が生きているかぎり……。」
p265
「そうなんですよ。ところが、行方不明のままで、生死は確認できませんでした。現在生きていれば、百歳をとうに超えています。」
p270
「「私なんて、もう六十年以上、孤独の固まりですよ。孤独すぎて、孤独って何なのかわからないくらい孤独の真っただ中ですよ。でもね、真っ暗闇の中にずっといたら、すべてが眩しくなってくるの。」」
p274
「自分の過去を、物語として思い出し、それがたしかに存在すると信じているだけのことだ。そもそも未来なんてものはない。もうすぐ死ぬことになると決まっている。したがって、今しかない。現在の自分の周辺しか存在しない。ただ、目の前にあるものに目を向け、美しい、可愛い、素晴らしいと感動したい、反応したいだけのリアリティだ。」
p278
「「人類というのは、そもそも何千年もまえから家畜なんですよ。」」
p281
「否、幻想だといえば、すべてがそもそも幻想ではないか。生きていることが幻想であり、また死も幻想である。おそらく、意識も幻想だ。エントロピィ増大のプロセスにおける波動、その揺らぎが見せる、一瞬の逆転、それが生命という幻なのだ。人間は、死に取り憑かれている。死に取り憑かれた状態を生きると定義しているのだ。」
p285
「「八田さんだな。」老婆は言った。」
p311
「八田洋久は、既に真賀田四季に押収されていただろう。彼の知性、彼の発想、彼のすべてを、天才科学者は手に入れた。だから……、八田洋久は、彼女の中に既にいたのだ。」
p309
「<わかりません>」
p312
「わからない。私には、わかりません。それが結論なのだ。そこが、私の到達点。」
p316
「私は学ぶしかない。学んで、自分の頭で考え、私自身の将来を作っていかなければならない。」
p320
「「久慈昌山先生の講座です。既に、メールのやり取りを彼としています。渡米のときには、お祖父さんも一緒についてきてほしい。二人でアメリカで暮らしましょう。」将太は、すらすらと淀みなく話した。「そうすれば、こちらの家族と別れられる。その方が、都合が良いでしょう?」」
p321
「「記憶が戻りましたか?」」
p321
「「そろそろだと思っていた。」将太は愉快そうに微笑む。「大丈夫、私と貴方は、どちらも八田洋久だ。なにも恐れることはない。」」
p322
「「毒を飲ませたのは、私だけになりたかったからだ。将太は、今は眠ったままだよ。」少年は、その深く冷たい眼差しのまま、今度は子供のように微笑んだのである。」