ムルムル
@murumuru
2026年5月28日
高い城の男
フィリップ・キンドレッド・ディック,
フィリップ・K・ディック,
浅倉久志
読み終わった
役者あとがきからの引用になるが、この作品のテーマを一言で表すなら、「本物とまがいもの」であると思う。
たとえば間違い探しにおいて、「どちらが本物か」という判断は極めて恣意的なものになりうる。真作と贋作のあいだにも、物質的な差異はほとんど存在しない。そこにあるのは、歴史や文脈の違いだけである。
「イナゴ」と作中世界、本物の骨董品と偽物の骨董品。それらの区別に価値はない、と切り捨てるのは簡単だ。しかし、人間は本来、意味のないものに意味を見出す存在でもある。それは知的営みであり、同時に、強力な結束やモチベーションを産む。
チルダンが、何の変哲もないブローチに新しい文化の芽生えを見出し、それが俗な大量生産品へと堕していくことを拒んだ姿は、その象徴のように感じられた。

