
あずき(小豆書房)
@azukishobo
2026年5月28日
「もののあはれ」の訳し方
大野ロベルト
「もののあはれ」を定義してください、と言われてもうまく言語化することはなかなかに難しい。「しみじみと心にしみとおる情念、哀歓」と説明されても、「ぼんやりした言葉」を「ぼんやりした言葉」で言い換えられたようなモヤモヤが残る。
だったら英語に翻訳しながら考えてみよう、という本。
「もののあはれ」は導入で、本文では『おくのほそ道』や『伊勢物語』、『土佐日記』など日本の古典文学を代表する作品たちが登場する。あらすじを知らなくても説明してくれるので大丈夫。
翻訳を通して、あるいは翻訳からこぼれ落ちるものから、日本語や日本文化への理解を深める。
言語のもつ流動性とか可能性とか、豊かさを感じられて面白い。
「〜であることだなぁ」「〜か、いや〜である」など、受験に適した不自然な訳し方を教える教育によって、古典がまるで特異なもののようになっている、という指摘も。これらが生まれた時代も現代と地続きであり、人間の感情は今も昔もそう変わらないはず。その点、英語訳は素直。




