

あずき(小豆書房)
@azukishobo
山に囲まれた福井県池田町にてひっそりと本屋&カフェをやっています。いつも数冊を同時並行で読む。
- 2026年7月8日
言語化だけじゃ伝わんないヤギワタル,ヤギ・ワタル人に何かを伝える手段は、たしかに言葉以外にも色々あるよなぁ。これを知っていると、意外と役に立つかもしれない。 そもそもコミュニケーションって、相手がいるもの。 "言語化" も大切なスキルだし、ちょっと前には "見える化" も流行ったけど、それらは、相手と前提を共有できている上で活きてくるものなのかもしれない。それより手前にある、コミュニケーションにおいて大事なことがたくさん書かれているように思った。 - 2026年7月7日
思考のストレッチ田村正資高校生クイズで優勝、quizknockメンバーとしても活躍し哲学を専門とする著者が、あーだこーだと考えたことを綴った思考のエッセイ集。著者が考えたことが書かれているのだけど、自然と読者の思考も柔らかく引き伸ばされていく。まさにタイトル通り、痛気持ちイイくらいの感覚で読める、ありがたいエッセイだ。 とくに面白く読んだのが、自分が苦しい立場に置かれたときにこそ強く意識される偶然性への向き合い方。それと、岩手で震災の伝承に取り組む高校生たちの発表から考えた、翻訳という営みについて。 この人は考えることが本当に好きなんだろうなと思う。読んでいるうちに、考えるって楽しいよなー、と素直に思える。 - 2026年7月6日
短歌の作り方、教えてください一青窈,俵万智この日が来ると思い出す。 「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 何でもない日を自分(たち)だけの記念日にしていいんだなと思える、皆んなに届く名歌。 そんなサラダ記念日を詠んだ俵万智さんが、短歌初心者である一青窈さんに行ったマンツーマンレッスンの記録が、この本には収録されている。 一青窈さんの作った短歌を往復書簡形式でブラッシュアップしてゆくのだが、一青窈さんも自ら作詞を行う方とあって、作る短歌が一発目からなんだかすごい。独特の世界観がある。だからこそ俵万智さんの手にかかれば、読者も様々な言葉の効果や面白さを発見できる。短歌入門本の中ではなかなかエクストリームな一冊だと思う。 - 2026年7月5日
せやかて、あの街は一穂ミチ,上村裕香,円城塔,加藤進之介,桂りょうば,金菱清この前のお休みは、久しぶりに京都に行ってきた。学生時代を過ごした京都。卒業したての頃は、生活していたエリアや馴染みの店を懐かしんで足を運んだものだったが、何年も経つともう観光客としての京都。ちょっとよそよそしい。 だけど細い通りを少し歩くと、そこに流れる空気やリズムを体が思い出して、「あぁ、京都だ」と思う。今の私にとって、京都はそんな街。 ひとことでは片付けられへん。どの街もそうだ。 40人の書き手が綴る、大阪・京都・兵庫の街の記憶。 読みながら、関西ってやっぱり"濃い"よなーと思う。歴史が古い街には、ありとあらゆるものが渦巻いている。生活が積み重なって、層になる。 - 2026年7月4日
- 2026年6月29日
本とは何か難波優輝本を楽譜になぞらえて、読書とは "パフォーマンス" なのだという。ここで言う "パフォーマンス" とは、音楽を演奏するようなこと。リズムがあり、フレーズがあり、音程や抑揚がある。黙読であっても。 思い当たる節があった。つい先日、少々読みづらい訳書を一緒に読み進めている仲間との会話の中で、「譜読みしづらい曲みたいだよねぇ」とこぼしていたところだったのだ。読んでいるうちに作品の特徴が分かってきたり、自分なりの読みこなし方がつかめてきたりする。 こう考えると、読書とはきわめて能動的なものであり、人によってまったく違う体験なのだと理解できる。そして、自分の演奏を客観的に聴くのが難しいように、自分の読書パフォーマンスを客観的に分析することも難しい。自分の隠れた読み癖を見抜くのも難しい。 同じ本を、時間をあけて読むと印象がガラッと変わることがある。その時にはじめて過去の自分の読み方を客観的に捉えることができたりもする。読書はじつは再現性がないものなのだ、と気付く。 一気に読み終える本もあるけれど、たいていの本は、少し読んでは日常に戻り、また少し読む。その合間の生活は、読書の延長なのだという。読んでいるときの生活と、読んでいないときの生活とは、やっぱりちょっと違う。 席で集中して読書されていた方が、お会計のときにその読書についてポツポツとお話してくださることがある。体験を分けてくださるようなありがたい気持ちで耳を傾けながら、あぁいい時間だったんだなーと嬉しくなる。 - 2026年6月29日
批判的日常美学について難波優輝日常生活において「ちゃんとしている」ことは、倫理的に正しいように思われる。さらにそれは「美しいこと」と結びつけて考えられることが多い。この結びつきを問い直し自由に「暮らし」を選びとるための哲学的考察。エッセイに近い感じかなぁ。 社会的な規範が多様化して自由になるどころか逆にがんじからめになってツラいなー、っていうわたしたち現代人への処方箋だ、これは。救われる人は多いと思う。 - 2026年6月24日
嫉妬論山本圭嫉妬心ほど厄介なものはないと思う。だから嫉妬心を鎮める方法や、自身の成長に繋げるためのアドバイスなどが書かれた本は多い。 この本はそういった類のものではなく、嫉妬というものをもう少し社会的に論じていく。 嫉妬心をなくそう、という言説は巷にあふれているが、人間社会において嫉妬心はなくならない。なくならないものとして、ではどういう社会がより健全であるか。嫉妬心は本当に悪い作用ばかりなのか。嫉妬心が一切働かない平等な社会で、はたして人々は幸せになれるのか。 これまで、自分はあまり他人に嫉妬しないタイプだと思っていた。他人の嫉妬心には敏感な気がするのだが、自分の嫉妬心には気付きにくいものなのかもしれない。自分の思う正義に嫉妬心が隠れていないか、その視点を得られたことは大きい。 - 2026年6月22日
道路をわたる動物たちベン・ゴールドファーブ,木高恵子雨の夜は、山から田、田から山へと、たくさんのカエルたちが道路を渡るのが、運転席から見える。何もわざわざここを通らなくても…と思うけど、それは彼らにとっても全く同じことであろう。 人間生活、とくに道路の問題が、動物たちの生態にいかに影響してきたか。この本では、その実態が多数、指摘されている。道路による往来の断絶、車による衝突だけでなく、騒音もまた一部の動物たちに深刻な影響を及ぼす。 道路が敷かれた結果どんなことが起きたか、という道路生態学の研究が、道路を敷く前の計画にもっと活きると良いなと思う。どんな町に住みたいか、考えさせられる。 - 2026年6月17日
プラスチック内田かずひろ,岩田忠久中東情勢の悪化により石油不足が懸念されたことで、あらためて身のまわりにあるプラスチック製品の多さに気づかされました。 でもプラスチックっていったい何?どんな種類がある?どうやって作られる?ゴミのゆくえは?リサイクルはどうなってる? 今の技術、問題点、未来にはこうなるかも、などなどを、分かりやすく説明してくれる絵本。大人が読んでも勉強になります(当店では以前、大学の先生が研究室の学生さん用にと購入されてました) 生分解性プラスチックのひとつであるカゼインプラスチックは、牛乳から簡単に作ることができる。自由研究にいいかも。実際に作ってみて、強度を調べたり、土や雨や紫外線にさらして分解させてみたり。 この本を読んで、高分子化学って面白い!と思い研究に進む子どもたちがいるかもしれない、と思うと、未来の技術にわくわく。 この"イチからつくる"シリーズはどれもおすすめ。 - 2026年6月16日
眠れない夜に思う、憧れの女たちミア・カンキマキ,末延弘子40代、独身、子なし、仕事なし。40代で20代の生活状況に戻り、義務も職場も、お金もない。自由だ。同時に、社会の部外者だ。 自らをそんなふうに感じる著者が、眠れぬ夜に思う、勇敢で自立した女性たち。フリーダ・カーロ、ジョージア・オキーフ、草間彌生、ジェーン・オースティン… 彼女たちを追いかけて、著者は探検の旅に出た。こんなふうにも生きられる。プランBを授けてくれる偉大な夜の女たち。自分の目でみて、感じるのだ。 - 2026年6月15日
- 2026年6月12日
増補 女人禁制の人類学鈴木正崇2018年 相撲の土俵上で倒れた人を救命するために土俵に上がった女性に対し「下りてください」というアナウンスがなされた。 山岳信仰により女性の立ち入りが認められていない山へ、たびたび強行登山が行われる。 こんなふうに「女人禁制」はこれまで何度も何度も問題視されながら、その議論は着地点が見つからず、繰り返し立ち現れる。 正直「なんでダメなの?」と思うが、是か否か、あるいは感情論ではなく、ちゃんと知りたいと思い、仕入れてみた。 開かれた対話と議論を促すための基礎資料と考え方を示そうとした、とまえがきに書かれている。 「伝統」は女人禁制の維持派にとっての「伝家の宝刀」のように使われる。しかし、その「伝統」とはいったい何なのか。 - 2026年6月8日
- 2026年6月3日
新装版 そう書いてあった益田ミリ益田ミリさんの10年程前のエッセイ集の、新装版。 内容は変わらず面白いわけだが、最近「安住紳一郎の日曜天国」の配信を聴くせいか、頭の中で安住さんの声でエッセイが朗読されてしまう。へぇ〜、いいねぇ、そうだよねぇと、相づちまで安住さんの声で頭の中に流れる、、笑 相性がぴったりなのだ。 大人の日々を、ちょっと楽しく、愉快に。しみじみと。 ひとりでいたいけどちょっと寂しい、誰かと気を遣わないお喋りをちょっとだけしたいな…というときに開くのにぴったり。 - 2026年6月2日
魔女の体力 40歳、女性が体力をつけるべきときイ・ヨンミ,田中千晴低身長、痩せ型、低体力、デスクワーク、夜型。おまけに高血圧を患い、ますます運動から遠ざかっていた著者が、40歳を超えてから運動を始め、ゆっくりと少しずつ、そしていつの間にか別人のようになるまでを綴ったエッセイ。 運動を始める前の著者は、運動できない理由を見つけてほっとしたり、フルマラソンを走る夫に「お金を払ってまで走るなんて」と言ったり、まるで私そのもので笑った。ところどころで、著者に変わるきっかけを与えた映画が出てきて、観てみたくなった。 今日から始めよう。昨日より今日だ。 - 2026年6月1日
- 2026年5月28日
「もののあはれ」の訳し方大野ロベルト「もののあはれ」を定義してください、と言われてもうまく言語化することはなかなかに難しい。「しみじみと心にしみとおる情念、哀歓」と説明されても、「ぼんやりした言葉」を「ぼんやりした言葉」で言い換えられたようなモヤモヤが残る。 だったら英語に翻訳しながら考えてみよう、という本。 「もののあはれ」は導入で、本文では『おくのほそ道』や『伊勢物語』、『土佐日記』など日本の古典文学を代表する作品たちが登場する。あらすじを知らなくても説明してくれるので大丈夫。 翻訳を通して、あるいは翻訳からこぼれ落ちるものから、日本語や日本文化への理解を深める。 言語のもつ流動性とか可能性とか、豊かさを感じられて面白い。 「〜であることだなぁ」「〜か、いや〜である」など、受験に適した不自然な訳し方を教える教育によって、古典がまるで特異なもののようになっている、という指摘も。これらが生まれた時代も現代と地続きであり、人間の感情は今も昔もそう変わらないはず。その点、英語訳は素直。 - 2026年5月27日
ふたりの読書会向井和美ある日、無期受刑者から届いた一通の手紙。「こんな私でも参加させていただけるような読書会はないでしょうか」 そこから、本をめぐる手紙のやりとりが始まった。この本はその記録。 読んでいて、私は「本を読む」ということにこんなに真剣に向き合ってきただろうか、と思わされた。 どの人のところにも、本は同じ顔をして届く。だけど読み方は人の数だけある。 「自分のことは自分がいちばんよく分かっている」それは本当か。 読みこぼしているものがたくさんあるように思えてきた。読書には終わりがない。 ふたりの読書会である往復書簡は今も続いているそうだ。 - 2026年5月26日
はじめてたこ焼きを食べた日のこと生湯葉シホ"あ、こういう気持ちを味わえることはきっとこの先どんどん減っていくんだろう、とそのとき直感的に思って、未来の自分のために文章を書きはじめた。" 「まえがき」より 繊細だけど、芯をしっかり持った方なのだろうな、と思った。芯があるからこそ、新しいことに出会える(ぶつかれる、楽しめる)のだ、きっと。でも柔らかい言葉で綴ってくれているから、それが良いバランスで好きだなと思った。
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