

あずき(小豆書房)
@azukishobo
山に囲まれた福井県池田町にてひっそりと本屋&カフェをやっています。いつも数冊を同時並行で読む。
- 2026年8月23日
曖昧な弱者の時代伊藤昌亮明白な弱者(マイノリティ)と、そこには入らないけれど苦しい"曖昧な弱者"。「自分たちが苦しいのはあの人たちが守られすぎているせいだ」と後者が前者に敵意を抱く。本来、異なるカテゴリの問題であるはずなのに、どちらがより可哀想かを争って足を引っ張り合っているように見える。じゃあどうしたらいいの?を考えたい。著者の答えは最後の結論に書かれているけど、読む人、今を生きる人が各自考えるべき問題だと思う。書いてあること自体は難しくないので、いろんな人に読んでみてほしい。 - 2026年8月16日
さがしもの角田光代夏は昔から、暑さしのぎで小説ばかり読んでいる。 本や古本にまつわる短編集。優しいきもちになれる。本に対しても自分に対しても。 本は、読み手によって、また読むタイミングによっても、いろいろに変わる。それが伝わってくるお話ばかりだった。 音楽もそうなのだと、私の好きなピアニストの方がインタビューの中でこの本を取り上げてお話されていたそうだ。ピアニストは、こう聴いてほしい、こう感じてほしい、と思って弾くのではなく、その音楽そのものを表現する。受け手はそれをどのように感じても良いのだ。 この本も以前に一度は読んだことがあったと思うが、そのインタビューのことを知ったあとで読むとまた、違った読書体験となり、めぐる思考も変わる。再読のきっかけをありがとうございました。 - 2026年8月12日
文庫 豆大福と珈琲片岡義男現在87歳片岡義男さんの10年ほど前の短編集。昭和から営業してそうな喫茶店が間違いなく似合う本。 登場人物たちのセリフがいちいちキザ、ツッコミを入れたくなるくらいキザ、女のひとがいちいち都合よく都合よい(女性蔑視というわけではない)。ウケる〜と思いながら読む。まじめに読むのでない。キザなのにカッコいいんだよな〜。豆大福は食べたくなる。鯛焼きも。おともに珈琲は言わずもがな。 昭和の終わり頃の空気ってこんなだったのかな。トレンディだな。クセになるかも。上品で洗練された昭和。z世代にもウケるのでは。 - 2026年8月11日
哀しい予感吉本ばななそういえばずいぶん長いこと読んでなかった、と気付きあらためて読んだ。 何回か読んだはずなのにストーリーも何もすっかり忘れていた。笑 たぶん、私は吉本ばななさんの文体がすごく好きだったので、ストーリーはさほど重要ではなかったのだ。そして吉本作品を読むと、このように文体が吉本文体になってしまう。 『哀しい予感』は吉本ばななさんの初の長編なのだそうだ。どおりで吉本ばななさんの要素がてんこ盛りだと思った。若い。読んでいた私も若い。あぁ若かったなぁ…ではなく、若返る。ロマンチックで美しくて儚くてずるくてまっすぐで世界を信じていて救いがある。 - 2026年8月11日
100分間で楽しむ名作小説 夜市恒川光太郎ずっと「なんで?」と思いながら読んだ(野暮だ) 何も悪いことしてない子どもなのに…そりゃ好奇心で行っちゃうよね。 足を踏み入れてはいけないダークサイドってあるんだ。ある人にとっては魅惑的で抗えない。誘惑に負けて入っちゃったら、何度でも行ってしまうんだ。別にそういう教訓めいたことを伝えたいお話ではないのだろうけど。 確かにホラーよりファンタジー寄りではあるが、もし子どもの頃に読んでたらトラウマになってただろうな〜笑 世界観は『千と千尋の神隠し』に似てる。 面白かったのは、商人たちの売り文句と、2回あった衝撃の展開。 読んで、夜市に行ってみたい!って思う人と、絶対に行きたくない!って思う人がいるかもしれない。私は後者だな。笑 しかし総じて面白かった! 角川ホラー文庫版だともう一編収録されているようで、そちらも読んでみたい。 - 2026年8月5日
首里の馬高山羽根子めちゃくちゃ良かった。 これは小さき者たちの話だ。小さいけれど、小さいことを分かってもらおうとか、ケアしてもらおうとか、自分たちにも何かできることがあるんだとか、そういったアクションとも距離をとり、声なき声と世界のあらゆる知識をひろい集めながら、それを強さに変えて生きる人たちの誇り。理解されなくてもいい、むしろ自分たちが理解されないような世の中の方がいい。爆弾も台風も悲しい出来事も、やってこない方がいい。 解説の中に引用されていた、小川洋子さんの選評にとても共感した。 "壮大な小説だ。人間が生きている痕跡を選別せず、平等に尊ぶ意味を問い掛けてくる" 現実世界で、地域の歴史や生活の記録を残そうという取り組みを見ると、残すものと残さないものを選別できない私は胸が苦しくなる。主人公は選別せずに残すことを選ぶ。 - 2026年8月4日
丸の内魔法少女ミラクリーナ村田沙耶香短編が4つ収録されていて、4つめは読みながら爆笑。 たぶんだけど、「書きたいメッセージが先にあって、そのためにはこういう設定が必要で〜」という書き方ではなく、「もしもこういう人がいたら〜もしもこういう社会だったら〜」という設定が先にあって、その中で自由に登場人物を泳がせてストーリーを作っていらっしゃるのではないかなと思った。たぶんだけど。だから何が起こるか分からなくてぐいぐい引き込まれる。 1つめの表題作と、他3つとでは、設定にパンチの差はある。なので、2作目を読み始めて「ふぇっ?」って言った笑 これ読んでると現実をばかばかしがれるため、御守りになる人もいるんじゃないかなぁ。 まみまぬんでらです。 - 2026年8月3日
- 2026年7月28日
ラッシュライフ伊坂幸太郎そういえば学生時代に流行ってたな〜と思って読んでみた。 最後まで読むと一枚のだまし絵をみているような感覚になり、頑張って最後までたどり着いてよかった〜と思った。巧みだな〜 平成の時代の小説って面白かったな〜と思う。教訓やメッセージ性、イデオロギーがそこまで強くなくて、なんていうかバッファがあってただただ面白い。それでいて文学的。昭和でも令和でもなく平成の小説。 - 2026年7月27日
理系の読み方大滝瓶太"登場人物はなぜ動くのでしょうか? ここで物理を考えてみましょう。" 小説のテーマ設定を「問題」と例えたり、小説の舞台を「閉じた系」「開いた系」と呼んだりしながら、小説を理系的に解説していく。 小説の味わい方は人それぞれだけど、私も理系出身だからか、読みかた似てるかも…!と思った。理系の方で小説の好きな方にはぜひ読んでみてほしい。 これまでに読んだ小説も、あらためて読み直してみたくなるかも。 - 2026年7月22日
お土産の文化人類学鈴木美香子多くの日本人が旅行先で菓子土産を買い求め、職場や周囲の人々に配る。今では見慣れたこの習慣、長い目でみると比較的新しいものらしい。 キーホルダーやペナントなどの記念品土産にかわり、菓子土産が主流になって定着したのは1990年代からだそう。 そこにはどのような背景があったのか。 お土産から見えてくる社会のあれこれを読み解く。 人はお土産に何を期待するのだろう。 - 2026年7月14日
人類学のつくり方橋爪太作人類学は、私のイメージでは哲学と社会学の間という感じ。この本を読めばある程度、体系的に人類学の考え方を整理できるのかな?と思い読み始めてみた。 すると、思った以上にこの著者の個人的経験がずーっと書かれている笑 いやいやいや…と思ったけど、そうか、これこそが人類学のつくり方なのか、と途中から読み方が変わった。 いわく研究者自身の身体や感覚が観測装置であるのだという。科学者が顕微鏡を使って真理を明らかにするように、人類学者は自身の身体をうまく運用することで、経験から知識を編んでいく。なるほど。 続きを読むのが楽しみ。 - 2026年7月11日
ミドル・エイジ・ビギンズ東畑開人いつのまにか青年期が終わり、人生の後半戦に差し掛かっていると気付く。急に体力や気力の衰えを感じて焦る。同時に、自分の人生はこれでよかったのか、と自問し葛藤を抱える。 将来への不安、焦り、喪失感。「ミドルエイジ・クライシス」、「ミッドライフ・クライシス」、「中年の危機」などと呼ばれる、中年期に陥りやすい心理的危機感。1970年代に広く認知されるようになった概念で、心理学の分野では既に確立されたいくつかの学説があるそう。 この本の目的は、それらを現代版にアップデートすること。そして、ミドルエイジ・元ミドルエイジの4人の方々へのインタビューを通して、さらなるヒントを得ること。 鷲田先生の「大したことないのに追い詰められるんですよ」がいいなぁ笑 自分の物語に執着しがちな中年の皆さま、ぜひ。 私は焦りが少し薄まりました笑 - 2026年7月11日
- 2026年7月8日
言語化だけじゃ伝わんないヤギワタル,ヤギ・ワタル人に何かを伝える手段は、たしかに言葉以外にも色々あるよなぁ。これを知っていると、意外と役に立つかもしれない。 そもそもコミュニケーションって、相手がいるもの。 "言語化" も大切なスキルだし、ちょっと前には "見える化" も流行ったけど、それらは、相手と前提を共有できている上で活きてくるものなのかもしれない。それより手前にある、コミュニケーションにおいて大事なことがたくさん書かれているように思った。 - 2026年7月7日
思考のストレッチ田村正資高校生クイズで優勝、quizknockメンバーとしても活躍し哲学を専門とする著者が、あーだこーだと考えたことを綴った思考のエッセイ集。著者が考えたことが書かれているのだけど、自然と読者の思考も柔らかく引き伸ばされていく。まさにタイトル通り、痛気持ちイイくらいの感覚で読める、ありがたいエッセイだ。 とくに面白く読んだのが、自分が苦しい立場に置かれたときにこそ強く意識される偶然性への向き合い方。それと、岩手で震災の伝承に取り組む高校生たちの発表から考えた、翻訳という営みについて。 この人は考えることが本当に好きなんだろうなと思う。読んでいるうちに、考えるって楽しいよなー、と素直に思える。 - 2026年7月6日
短歌の作り方、教えてください一青窈,俵万智この日が来ると思い出す。 「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 何でもない日を自分(たち)だけの記念日にしていいんだなと思える、皆んなに届く名歌。 そんなサラダ記念日を詠んだ俵万智さんが、短歌初心者である一青窈さんに行ったマンツーマンレッスンの記録が、この本には収録されている。 一青窈さんの作った短歌を往復書簡形式でブラッシュアップしてゆくのだが、一青窈さんも自ら作詞を行う方とあって、作る短歌が一発目からなんだかすごい。独特の世界観がある。だからこそ俵万智さんの手にかかれば、読者も様々な言葉の効果や面白さを発見できる。短歌入門本の中ではなかなかエクストリームな一冊だと思う。 - 2026年7月5日
せやかて、あの街は一穂ミチ,上村裕香,円城塔,加藤進之介,桂りょうば,金菱清この前のお休みは、久しぶりに京都に行ってきた。学生時代を過ごした京都。卒業したての頃は、生活していたエリアや馴染みの店を懐かしんで足を運んだものだったが、何年も経つともう観光客としての京都。ちょっとよそよそしい。 だけど細い通りを少し歩くと、そこに流れる空気やリズムを体が思い出して、「あぁ、京都だ」と思う。今の私にとって、京都はそんな街。 ひとことでは片付けられへん。どの街もそうだ。 40人の書き手が綴る、大阪・京都・兵庫の街の記憶。 読みながら、関西ってやっぱり"濃い"よなーと思う。歴史が古い街には、ありとあらゆるものが渦巻いている。生活が積み重なって、層になる。 - 2026年7月4日
- 2026年6月29日
本とは何か難波優輝本を楽譜になぞらえて、読書とは "パフォーマンス" なのだという。ここで言う "パフォーマンス" とは、音楽を演奏するようなこと。リズムがあり、フレーズがあり、音程や抑揚がある。黙読であっても。 思い当たる節があった。つい先日、少々読みづらい訳書を一緒に読み進めている仲間との会話の中で、「譜読みしづらい曲みたいだよねぇ」とこぼしていたところだったのだ。読んでいるうちに作品の特徴が分かってきたり、自分なりの読みこなし方がつかめてきたりする。 こう考えると、読書とはきわめて能動的なものであり、人によってまったく違う体験なのだと理解できる。そして、自分の演奏を客観的に聴くのが難しいように、自分の読書パフォーマンスを客観的に分析することも難しい。自分の隠れた読み癖を見抜くのも難しい。 同じ本を、時間をあけて読むと印象がガラッと変わることがある。その時にはじめて過去の自分の読み方を客観的に捉えることができたりもする。読書はじつは再現性がないものなのだ、と気付く。 一気に読み終える本もあるけれど、たいていの本は、少し読んでは日常に戻り、また少し読む。その合間の生活は、読書の延長なのだという。読んでいるときの生活と、読んでいないときの生活とは、やっぱりちょっと違う。 席で集中して読書されていた方が、お会計のときにその読書についてポツポツとお話してくださることがある。体験を分けてくださるようなありがたい気持ちで耳を傾けながら、あぁいい時間だったんだなーと嬉しくなる。
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