sea
@sea06297
2026年5月29日
大きな鳥にさらわれないよう
川上弘美
読み終わった
柔らかくて少しひやっとする、好きな読み心地の物語と文体だった。ぼんやりと全体を覆う霧が晴れて世界の輪郭が見えてくる。愛と憎しみ、期待と諦め、秩序と混沌、個と全体、対立するものたちが同時に、矛盾せず、淡々と存在している世界(SFのジャンルらしいけど、こうして文字に起こしてみると現実となんら変わらなくておかしくなる)。
一つ一つの話が連鎖して、最後はマクロな視点とともに序章に戻っていく構成が綺麗で好き。読み進めていくと色んな気持ちになって、共感できるものもあれば受け入れがたいものもあってかき乱された。これは私(私たち)と世界の間で起こっていることでもあり、私の中で渦巻いているものでもあるのかな。私は、あなたは、どうしてこんなにも違うのか。どうしてこんなに分かり合えず、それなのに愛することをあきらめられないんだろう。
「でも、それだけだ。あたしを憎んでいないことは、あたしを愛しているということとは、まったく別のことだ。」
「自分と異なる存在を…受け入れられると、わたしは信じていた。そうだ。わたしたちと近種の、かつわたしたちよりも優れたものならば、わたしは受け入れたことだろう。」
「人類のことを心配するんだとしたら、…自分と、自分のよく知ってる奴らが楽しくやってたら、それでじゅうぶんじゃない。それ以上のことになんて、手がまわらないし、手がまわると思ってるとしたら、そりゃちっとばかり、えらそうなんじゃない?」

