ちゃそす
@1000book_zautusu
2026年5月5日
ハサミ男
殊能将之
読み終わった
43
ハサミ男の三人目の犠牲者。彼女の喉元に手が届くと思ったその時──彼女は何者かに殺された。ハサミ男を模倣する何者かの手によって。なぜ、私 (ハサミ男)以外に彼女を殺す必要があったのか?
堀之内が登場した時、私は思った。「お前が犯人だな?」
何せ、見た目は好青年、気さくで、優秀。そんな人物が、実は……というのが私は大の好物なのである。なので半ばコイツが犯人であってくれという願望も込めつつ、彼が犯人であるという疑いの下読み進めた。
そして若手警官磯部。堀之内に見染められたおっちょこちょいな彼から、私は松田を連想した。キラと判明したライトを撃つ光景も思い浮かべた。そう、私はデスノートが大好きなのである。
堀之内があえて磯部を選んだのも、彼が最もアホで扱いやすそうだとかなんだとか考えたのかもしれないと思った。そしてその予想は的中した。
堀之内によるハサミ男の精神分析で、2丁目のハサミについて言及されていないことが刑事から指摘されるのだが、その時私は「やはりコイツなのか……?」と半ば確信した。
堀之内目線、2丁目のハサミは本物のハサミ男からのある種のメッセージのように思え、相当不気味で気が気でなかっただろうことを思うと笑えた。こいつ、相当焦っているはずだぜ。
そうして私は堀之内とハサミ男にライトとLのような対立構造を感じながら、わくわくと読み進めた。
そして堀之内とハサミ男との対面シーン。部屋の死体に驚く堀之内。
「たかがそんなことで人を殺すなんて、あなたは頭がおかしいんじゃないか」
ハサミ男にこう言われ、逆上する堀之内。
最高。
そして磯部くんの登場。私の想像通り、ライトと松田のような展開に。自分を撃たせようとするハサミ男に怯える堀之内もよかった。犯罪者心理の深淵を直接覗いたのは初めてだったのかもしれない。
「わたし」が女性であることは意外だったが、特段重要なことには思えなかった。ハサミ男が自身の精神に興味がないように、私もハサミ男が何者なのかに興味はなかった。ただ堀之内がハサミ男と対面してどうするのか、というところだけが私の関心を惹いた。
なので堀之内が部屋にやってきて、私が望んだ通りの反応をしてくれて嬉しかった。優位に立っている (と本人は思っている)はずが本物のサイコに掻き回されるところ、ちゃんと内心でノンキャリア組を見下していたところ、女子高生と本気で恋愛しちゃうところ、煽り耐性の低さ、賢い割に迂闊なところ、全部が素敵だ。最初に想像したエリートに擬態する殺人者像とは違ったが、「ホンモノを前に打ちのめされるニセモノ」として完璧な振る舞いをしてくれたと思う。
ミステリーには苦手意識があった。それは謎を解く動機に共感できないと読むのが辛いからだ。ただ本書は「殺人鬼が模倣犯を追う」という分かりやすい動機があるので読むのが苦にならなかったし、堀之内が真犯人だと早い段階で気がつけたことでより楽しく読み進めることができた。本書をきっかけに気が向いたら他のミステリーも試してみようと思った。