K野 "シミズくんとヤマウチくん" 2026年5月29日

K野
K野
@knocano
2026年5月29日
シミズくんとヤマウチくん
シミズくんとヤマウチくん
山内尚,
清水えす子
漫画家の山内尚さんと精神科医でエッセイストの清水えす子さんの共作本。 漫画部分はふたりの生まれた時に割り当てられた性別を反転させた架空のふたり、シミズくんとヤマウチくんの生活を想像した話が描かれる。 この「反転した2人」というのがクィアが親類などに対してパートナーの存在を説明する時に生み出した非実在の存在、という複雑な気持ちになる設定なのだけれど、この本全体は作者のお二人が目指した通りとても可愛くて優しい。 文章のエッセイ部分は実際のお二人の日常だけれど服へのこだわりたっぷりの悲喜交々の様子がなんとも愛らしい。 それでいてハッとする表現もあちこちに散りばめられている。 たとえば「ロールモデル」について。 「皆のためのわかりやすい灯台にならずとも、気まぐれな街燈や民家にあるちぐはぐなシャンデリアや道行く懐っこい鬼火になって両手を広げて届くくらいの範囲でも照らしたら、孤独感と絶望に張り詰めた誰かのまなじりをふっと緩ませることができるかもしれない」 こんなじわっと沁みる言葉がそれこそ街燈のようにぽつぽつ現れる。 読み終えたけれど時折手にとって読み返したくなる大切な一冊になった。
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