ガクソン "ヒルビリー・エレジー" 2026年5月30日

ヒルビリー・エレジー
ヒルビリー・エレジー
J・D・ヴァンス,
山田文,
関根光宏
もともと気になっていたところ、三宅かほさんがYouTubeで軽〜く触れていたのをきっかけに読了。 読みやすい。ヴァンスさんが生まれ育った環境とそこでの経験、強烈な家族関係、そこから抜け出すきっかけと過程がわかりやすく感情移入してしまった。 ヴァンスさんがVPになる前に書かれたもので、トランプ政権やヴァンスさんのスタンスには賛同していないものの、現在のアメリカの分断を生んだ大きな要因が垣間見えて心を揺さぶられる。 幼少期の逆境、資本や機会の格差、エリート層とヒルビリー(本書に言う田舎者)の断絶。 そんな中でヴァンスさんは地元を抜け出すことができた数少ない例だった。 高校卒業後に軍隊に入り戦地に行き、退役後は国立大学に進学、その後名門イェール法科大学院を出て起業に至る。 しかし、これを本人はアメリカンドリームの体現として語らない。ただただ運が良かったと。 紛れもないヒルビリー精神を持ちながらも、多くの地元仲間と同じようにドラッグや貧困に喘ぐことなく立身出世できたのは、いつでも自分を信じてくれた祖父母、常に味方であり続けた姉のおかげだと。 自身が経験した逆境やトラウマの数々は、故郷では誰もが経験するありきたりな日常であった。 そんな中でも自分を腐らせずにいれたのは心から安心でき、信頼できる家族(の一部)がいたからこそだ、と。 これは遠くて近い国の話だと思う。 日本もこれから格差が広がり、思想や心情の分断が深まっていくように見える。 日々SNSには人々のキラキラ眩しい人生と鬱屈した気持ちとが激しく入り乱れている。 持てるものと持たざるものがいるのは明白だ。 不遇な身に置かれた者は、本人の努力でその環境から抜け出せるのか? 「そのはずだ。何事も自分次第だ。」僕もかつてはそう考えていた。だから頑張っても報われなかった時は、努力が足りなかったんだと自分を責めてきた。 でも本書を読んで、壮絶な環境から脱出できたことを幸運だったと言い切るヴァンスさんを知って、どうも努力だなんだの前に無視できない問題があると確信した。 そんなこともあり、次に読む本としてマイケル・サンデル氏の「実力も運のうち」を手に取った。 最後に、本書で考えさせられた個人的な視点を書き留めておく。 人が自分を信じ、自分の人生には価値があり、良い未来があると感じられるようになるためには、本書にてヴァンスさんが祖父母や姉から受けたように他者からの承認・信頼・関心、それに伴う安心感や自尊心の醸成がとても大切だと思う。 特に人生の早い段階でそれらを育むことは重要だ。 大多数の人にとって感情的な不安定さや終わりのないストレスは、その人のメンタルだけでなく人格やさらには能力までにも悪影響を及ぼす。 複雑性PTSDや発達性トラウマといった精神医学の観点からも明らかになってきているようだ。 僕はこれまで自分に価値があると中々思えない人生だった。ずっと根拠のない自信の無さがつきまとってきた。 とはいえ過去は過去だ。今とこれからをなるだけ楽しく幸せに生きていくためにも、等身大の自分を受け入れてくれる関係性、心から居心地いいと思える環境をつくっていきたい。
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