綾鷹 "マチネの終わりに" 2026年5月31日

綾鷹
綾鷹
@ayataka
2026年5月31日
マチネの終わりに
天才クラシックギタリストの蒔野聡史と、ジャーナリストの小峰洋子。40代で出会い深く惹かれ合った二人は、周囲の嫉妬やテロ事件、あるすれ違いによって引き裂かれてしまう。長い年月と別々の結婚を経て、運命の歯車が再び回り出すまでの愛の軌跡を描く物語。 大人の恋、美しいイメージ。 そしてはっとするような言葉が沢山。 特に蒔野の「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」という言葉は心に残った。 蒔野も洋子も、報われなかった愛をそれぞれに認識し直していく。 2人とも自分の感情をぶつける訳ではなく、内省で再認識していく姿は、後悔も抱えて前に進む強さを感じた。 インテリ的で感情移入できない登場人物かなぁと最初は思ったが、そんな姿が魅力的で2人のこともこの物語も好きになった。 ・「いや、ヘンじゃないです、全然。音楽ってそういうものですよ。最初に提示された主題の行方を最後まで見届けた時、振り返ってそこに、どんな風景が広がっているのか? ベートーヴェンの日記に、『夕べにすべてを見とどけること。』っていう謎めいた一文があるんです。ドイツ語の原文は、何だったかな。洋子さんに訊けば、どういう意味か教えてもらえるんだろうけど、・・・・・・あれは、そういうことなんじゃないかなと思うんです。 展開を通じて、そうか、あの主題にはこんなポテンシャルがあったのかと気がつく。そうすると、もうそのテーマは、最初と同じようには聞こえない。花の姿を知らないまま眺めた蕾は、知ってからは、振り返った記憶の中で、もう同じ蕾じゃない。音楽は、未来に向かって一直線に前進するだけじゃなくて、絶えずこんなふうに、過去に向かっても広がっていく。そういうことが理解できなければ、フーガなんて形式の面白さは、さっぱりわからないですから。」 蒔野はそう言うと、少し間を取ってから言った。 「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」 ・『ーー生きることと引き替えに、現代人は、際限もないうるささに耐えてる。音ばかりじゃない。映像も、匂いも、味も、ひょっとすると、ぬくもりのようなものでさえも。 …・・•何もかもが、我先にと五感に殺到してきては、その存在をめいっぱいがなり立てて主張している。・・・・社会はそれでも飽き足らずに、個人の時間感覚を破裂させてでも、更にもっとと詰め込んでくる。堪ったもんじゃない。・・・・・・人間の疲労。これは、歴史的な、決定的な変化なんじゃないか?人類は今後、未来永劫、疲れた存在であり続ける。 疲労が、人間を他の動物から区別する特徴になる?誰もが、機械だの、コンピューターだののテンポに巻き込まれて、五感を喧噪に直接揉みしだかれながら、毎日をフーフー言って生きている。痛ましいほど必死に。そうしてほとんど、死によってしか齏されない完全な静寂。・・・・・ ・僕は、君のやりたいことを最大限、尊重してきた。ただ、ひとつの意見として聴いてほしい。君は一体、自分に対して厳しすぎるよ。誰が見たって、十分すぎるほどのことをしてる!君は小同僚のジャーナリストが、イラクに行ったことがないというだけでいその資質を疑ったりするかい?しないよ、決して。それは、必要条件じゃない。 それでも君は今、イラクにいる。そしてもっと何か出来たんじゃないかって悩んでる。 それは、自分の能力っていうより、人間の能力自体を買い被りすぎてるよ。人類は、生物としていせいぜい歩いて移動できる程度の環境の中で進化してきたんだくこんな、地現全体がリアルタイムでリンクされてる状況なんて中もう一個人のポテンシャルをとわくに超えてしまってる。だったら、自分が生き抜くために最適の環境を選択して、それを自分の世界とするしかない。その内側で幸福を願うしかないじゃないか。違う? 君は、決して世界の不幸に目を瞑ってはいない。進んで関与した。誰にでも出来ることじゃない。あとはお他の人に責任を果たしてもらえば良いさ。・・・・・・ ・なるほど、恋の効能は、人を謙虚にさせることだった。年齢とともに人が恋愛から遠さかってしまうのは、愛したいという情熱の枯渇より、愛されるために自分に何が欠けているのかという、十代の頃ならば誰もが知っているあの澄んだ自意識の煩悶を鈍化させてしまうからである。 美しくないから、快活でないから、自分は愛されないのだという孤独を、仕事や趣味といった取柄は、そんなことはないと簡単に慰めてしまう。そうして人は、ただ、あの人に愛されるために美しくありたい、快活でありたいと切々と夢見ることを忘れてしまう。しかし、あの人に値する存在でありたいと願わないとするなら、恋とは一体、何だろうか? ・「難しいことはわかってる。でも、出会ってしまったから。その事実は、なかったことには出来ない。小峰洋子という一人の人間が、存在しなかった人生というのは、もう非現実なんだよ。俺が生きているこの現実には、洋子さんが存在している。そして、すぐ側で、存在し続けてほしいと思ってる。毎日こうして向かい合って、食事をしながら話をして、・・・・・・」 「わたしと結婚して、子供を育ててって生活を、蒔野さん、現実的に考えられる?それがこの関係のための正しい答えなのかしら?」 打算的だとは自覚しながらも、洋子はそれを確かめてみずにはいられなかった。 蒔野は、ほとんど諦念の響きさえある声で、少し間を置いてから言った。 「洋子さんを愛してしまってるというのも、俺の人生の現実なんだよ。洋子さんを愛さなかった俺というのは、もうどこにも存在しない、非現実なんだ。」 ・孤独というのは、つまりは、この世界への影響力の久如の意識だった。自分の存在が、他者に対して、まったく影響を持ち得ないということ。持ち得なかったと知ること。 同時代に対する水平的な影響力だけでなく、次の時代への時間的な、垂直的な影響力。それが、他者の存在のどこを探ってみても、見出せないということ。 ・彼は、洋子が真剣に考えている時の表情が好きだった。彼女の人生に対する真面目さを愛していた。相手に対する答えは、常に同時に自分自身に対する答えでもあらねばならない。そう信じている風の彼女の誠実さに、強く心惹かれていた。 ・戦争は、それは、誰が誰に何をしたかっていう問題は決して蔑ろに出来ないけど、その上で"人類”っていう見地もあるでしょう?人間として、すべきこと、すべきでなかったことっていう。他と比べて、自分はまだマシだったとかー自分の国はマシだったとかーそういう相対的な見方は、所詮は加害者同士の醜い目配せよ。わたしはそういうの、どうしても許せないの。被害者っていうのは、決して相対化されない、絶対的な存在でしょう?長崎の原爆とロンドンの空襲とを比べて、どっちも酷かったんだから、もう言わないことにしましょうなんてことには、決してならない。そうしてはいけない。やっぱり、被害者に対しては、人類っていう見地がどうしても不可になってくる。ーそういう発想自体が、ヨーロッパ的だって言われれば、そうなのかもしれないけど、そこから先の議論は、わたしは興味がないの。 ・「あなたにとって、今彼女が必要なら!しかも、その存在に愛を感じているのなら、一緒に生活することは決して悪いことではありませんよ。ただし、彼女に比べれば、自分はさしたる問題を抱えていないはずだと、苦しみを押さえ込もうとするのはよくないです。あなたは、戦争に行ってきたんですよ。その体験を、何か耐えられること、普通は克服できることと考えるのは、あなたが取材を通じて考えてきたこととは、違うんじゃないですか?」 洋子は、その言葉にハッとして唇を噛むと、自分が涙ぐみそうになるのに驚いた。そして、大きく息を吐くと、同意するように頷いた。 「そうですね。・・・弱い立場の人が、どうして自分を責めがちなのか、よくわかった気がします。自尊心のせいなんでしょうか?」 「それもあるでしょう。自尊感情だって、とても大事なものですから。戦争そのものが、最初から人間の耐性の限界を超える経験なのですから、平気で日常に復帰できるとは考えるべきじゃないです。」 「どうして同じ夢を何度も見るのか、・・・・自分なりに本を読んだりして、考えてたんです。あれは一体、何だったのか、その意味を言語化できれば、反復は治まるんじゃないか。決して、あの出来事を思い出させるジャリーラを遠ざけろというメッセージではないはずだ、と。」 「不安夢の説明は、なかなか難しいです。もう二度と、同じ経験はしてくれるなという警告の意味はあるでしょう。あなた自身が、設定値が過敏なセンサーのようになっていますから、ただのアラブ系移民がテロリストではないことなど明らかであっても、警報はやはり鳴ってしまうんです。今の不安な状態では、あまり分析的に考えすぎないことです。あなたみたいに、自分は大したことはないはずだと思い込もうとしている人に対して、からだの方が、冗談じゃない、こんなに傷ついているじゃないか!と訴えようとしているのかもしれない。その警告を発する回路が一旦設定されてしまうと、なかなか解除できないのが厄介なところです。」「止まるのを待つしかないんですか?」 「薬で不安を鎮めながら、生活を安定させてゆくことで状況は改善します。悲観しないで。必ずよくなります。元の自分に戻ろうとするのではなくて、体験後の自分を、受け容れ可能なかたちで作っていくことが出来れば、症状はやがて消えていくでしょう。」 「過去は変えられる、ということですか?」医師は一瞬、その意味を考えようとするような間を置いてから、「そう、あなた自身の今後の生活によって。良い表現ですね。」と頷いた。 洋子はその日、一番穏やかな表情になって、「「わたしが今、一番好きな人が、教えてくれた言葉なんです。」と言った。 ・蒔野と会話を交わしたあとには、いつも胸に、自分が束の間、快活であり得たことの余韻が、熱となって残っていた。他の誰と喋っていても、あんなふうに笑みが絶えないということはなく、彼との会話のどこを探してみても、自分が心から話したいこと、聴きたいこと以外には、何一つ見つからなかった。 洋子はそういう、彼と一緒にいる時の自分に、人生でこれまでに知らなかった類の愛着を感じていた。自分は、こんなふうに生きられるのだと教えられた気がした。それは、他の誰と、どんな場所にいた時の自分よりも心地良く、部屋に一人でいる時でさえ、彼がすぐ側にいることを考えて、ただその自分でいたかった。 彼を失うということは、つまりは、そういう自分を、これからはもう生きることが出来ないということだった。ただ思い出の中でだけしか。!そして、その「穴が空いたような」心の空白に、今は止め処もなく寂しさが染み出している。 ・洋子は、健康でないということの劣等感を、今ほど身に染みて感じたことはなかった。 その恥ずかしいという感覚はまったく間違っていて、自分がもし、病身の友人からそんなことを聞かされたならば、「どうして?何も恥ずかしいことなんかないでしょう?」と首を傾げながら励ますに違いなかった。 彼女は、そういうかつての自分に、健康な人間ならではの微慢な眩しさを感じた。 同情されたくないというような、強い自意識の抵抗ではなかった。ただ、発作に襲われてパニックに陥っているような無様な姿を、蒔野には見てほしくなかったのだった。 しかし、そんな関係が本当に愛の名に値するのだろうか?結局、自分たちは、そのまだ遥か手前にまでしか、辿り着いていなかったのではあるまいか。 ・アポロの隊員が月から眺めた地球の映像を見ながら、蒔野は、この広い惑星の上で、洋子に出会うための確率といったようなことを考えた。それは、人為的には決して実現不可能な出来事であり、しかし、その得然を、まるで必然であるかのように繋ぎ止めておくために、人間には、愛という手段が与えられているのではないか。 祖父江が倒れた夜のすれ違いから、別れに至った数日間へと記憶は広がり、更に出会ってからの十カ月間、まだ高校生だった頃の自分の演奏を彼女が初めてパリで聴いて以来の二十年間、そして、二人が生きてきた四十年ほど、それぞれの両親が出会い、愛し合った過去、その彼らがまた、生まれ、成長した年月、・・・・・と、彼はその暗闇に浮かぶ地球を見つめながら、時の流れをぼんやりと考えた。 遇然そのものは、善とも悪とも定められないはずだった。しかし、いずれにせよ、そのどこかで、ほんの少し何かが違っていたならば、世界は今のような姿をしておらず、自分は洋子と出会うことなく、そもそも二人は、存在さえしていなかったのかもしれない。 ・洋子は、「生存者の罪悪感 survivor's guilt」と呼ばれる心理学の用語の話をした。アメリカでは、9・11以降、再び注目され、最近では、イラクやアフガニスタンからの帰還兵のPTSDに関連して、時折、言及されることがあった。 多く生命が失われる戦争や自然災害、事故などを経験し、九死に一生を得た生存者が、その後、自分だけが助かったという幸運を喜ぶのではなく、むしろ激しい苦悩に苛まれ、時にはせっかくのその命を自ら絶ってしまうという逆説的な現象で、洋子は、ジャリーラに対しては米兵の例は避けー彼女のアメリカへの憎悪は、イラクにいた頃よりも募っていたし、むしろホロコーストや広島、長崎の原爆の生存者たちを例に挙げて説明した。 洋子は初めて、自分の母親もまた、実は長崎で被爆していることを語った。ジャリーラは、その告白に衝撃を受け、洋子に対し、縋りつくような共感を示した。母の場合は、生き残ったということもさることながら、長崎から逃げてしまったということも負い目となったという話をして、不合理だが、死者や死者の間近にいる者たちが経験できない幸福は、生存者にとっては、しばしば、自己への町責の原因になるのだと言った。 「誰かを見殺しにしたとか、身代わりにさせたとか、戦闘で実際に人を殺したとか、そういう具体的な経験がなくても、生き残ったっていう事実自体、やっぱり人を苦しませるものなのね。他の人ではなく、自分が生き残ったことには、何か意味があるはずだって考えて、それが見つからないっていうことは、・・・・・・あなたの経験とは比較にならないけれど、わたし自身も、それはわかる。」 ・あんなに正直で善良な人が、こんなにも早くその生を取り上げられてしまう一方で、自分は何事もなく、平穏な生を許されている。自分の犯したような酷い罪を、武知はきっと、一度も犯したことがなかっただろう。にも拘らず、自分はその報いどころか、なぜか奇跡のように願いが叶って、蒔野の愛だけでなく、今やその子供までをも授かっている。 早苗は、そのおかいさの中に生きていた。 運命とは、幸福であろうと、不幸であろうと、「なぜか?」と問われるべき何かである。そして、答えのわからぬ当人は、いずれにせよ、自分がそれに値するからなのだろうかと考えぬわけにはいかなかった。 ・自責の念を、妊娠中の不安な精神状態が倍化させた。 早苗は、洋子に対して口にした「正しく生きることが、わたしの人生の目的じゃないんです。わたしの人生の目的は、夫なんです!」という言葉を、戸惑いがちに振り返った。明らかに、それは言い過ぎで、そんなことを、常日頃から考えていたわけではなく、洋子に問い詰められて、咄嗟に口にしたことだった。 そう、洋子は早苗にとって、いつでも深く問いかけてくる存在だった。何を?自分という人間そのものについてを。彼女を意識する度に、早苗は、胸を押さえつけられるょうな劣等感に苦しんだ。実際に洋子と会話をしたのは、四年前の一度きりで、その時彼女は、むしろこちらの無理解に対して、優しく譲歩さえしていたはずだった。 にも拘らず、早苗の心に刺さった洋子の記憶は、水晶の分片のように無慈悲なまでに透徹していた。そして、その光に照らされると、彼女は酷く焦って、決まって本当の自分よりも悪く振る舞ってしまうのだった。 ・早苗のしたことは軽蔑していたが、彼女本人を恨むというよりは、人生そのものに対する虚無感の方が強かった。ジャーナリストとしては、もっと理不尽で、もっと過酷な困難を生きる人々を、これまで散々取材してきた。自分も、彼らと地続きの同じ世界を生きている。そうした発想は、なるほど、感情生活に一種の粗雑さを招きかねなかった。 どんな体験も、戦地と比べ出せば、「まだマシだ」という一言で片付けられてしまう。 しかも彼女は今、そうした場所への関与を強めつつある。それでも、悲哀は悲哀として、彼女の手計に残り続けていた。 ・「お前の意識の問題じゃない。一体、何が今日ー昨日でも明日でもなくーの場所まで連れてきた?何がお前を今ここに存在させている?もし今ここで誰かが銃を乱射したなら、問題はその事実じゃないのか?<ヴェニスに死す)のアッシェンバッハにせよ、タッジオを追っているつもりで、本当は追われていたんだよ。」「そこまで言うのなら、どの道わたしには、自分の運命を避けるべき手立てもないでしょう?」 ・「自由意志というのは、未来に対してはなくてはならない希望だ。自分には、何かが出来るはずだと、人間はじる必要がある。そうだね?しかし洋子、だからこそ、過去に対しては侮根となる。何か出来たはずではなかったか、と。運命論の方が、慰めになることもある。」 洋子は、父の目が、深い眼窩の奥で、引き絞られるようにして力を帯びたのを認めた。 そして、「そうね。・・・・・よくわかる、その話は。現在はだから、過去と未来との矛盾そのものね。」と頷いた。父が念頭に置いているのは、凄惨な紛争を経験し、解体された故国ユーゴスラヴィアの歴史であるはずだったが、洋子の胸を咄嗟に過ったのは、もっと遥かに小さな、「悲劇」とも名づけようのない、私的な記憶だった ・「リチャードとも、そういう話を随分としたのよ。グローバル化されたこの世界の巨大なシステムは、人間の不確定性を出来るだけ縮減して、予測的に織り込みながら、ただ、遅滞なく機能し続けることだけを目的にしている。紛争でさえ、当然起きることとして前提としながら。善行にせよ、悪行にせよ、人間一人の影響力が、社会全体の中で、一体何になるって。」「お前はどう思う?」 「・・・・・・わからない。揺れてるっていうのが、本当のところかしら。矛盾したことを言ってる気がする、時と場合によって。 誰も行動しなければ、この世界が動かないのは 事実だけど、お父さんが言うみたいに、人間が自分で考えて行動しなくても良いように、この世界はどんどん自動化されていってるから。車の運転が完全に自動化されれば、乗ってる人間のすることは、みんな余計なこと”になるでしょうね。或いは、織り込み済みのエラーか。・・・・・インターネットみたいな便利なものが登場して、そのお陰で遠くの人とも顔を見ながら会話が出来て、心を通い合わせることが出来るようになった。その一方で、悪用することだって出来る。でも、すべてはコミュニケーションそのものが自己目的化されたシステムの中で起きる、予想可能な止細なトラブルに過ぎなくて、そこで人の心が傷つこうと、誰かと誰かとの関係が絶たれてしまおうと、システムそのものの存続にまでは影響を及ぼさない。幸福や不幸を、誰のお陰で誰のせいだって考えようとしても、途方に暮れるところがあるわね。自分自身も含めて。・・・・・・」
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