704h "幽霊たち" 2026年6月1日

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@704h
2026年6月1日
幽霊たち
幽霊たち
ポール・オースター
読み終わった!なんじゃこりゃ。世にも奇妙な物語。整理するために感想を書く。 前作の『ガラスの街』の偏執な妄想を更に推し進めたような(まさに幽霊のような)掴みどころのない小説だった。それこそが狙いであると思う。 出版社も不安があったのか、あとがきには訳者の柴田元幸に加え、小説家の伊井直行、文芸評論家の三浦雅士の豪華三名が並んでいる。 しかし、あまり構える必要はない。難解な文章では全くない。語り口は心地よいのであまりストーリーを追おうとせずに、騙し絵を眺めるようにまずは楽しむのが正しい姿勢だと思う。ポール・オースターのユーモアは決して大きな声ではないが、耳を傾ける人を笑わせてくれる。 さて問題のストーリーだが、解釈は無限にできそうだ。オースター自身も、読者が楽しむための余白のある小説が好きだと語っている。 主人公のブルーは探偵としてブラックを見張っているうちに、自らの妄想に囚われていく。出来事は疑念を呼び、謎は晴らされることはない。更には疑念が現実を捻じ曲げるという逆転現象が起こる。 エッシャーの騙し絵に、二組のペンを持った手が、お互いを描きあっているというウロボス的構図の絵がある。まさに本作ではブルーとブラックは循環構造となっている。 更に虚構と現実は「合わせ鏡」のように反射し合い、奥に行くにつれて像が濁り歪められ、幽霊のように朧げな存在となっていく。どちらかが去れば、どちらも居なくなる。 その歪み方の素晴らしさ。何よりもやはり文章が良い!上手いというより、味わい深い。ポール・オースターの派手さはないがドライブしながらじわじわ効いてくる文章は、好きな人は凄くハマるタイプな気がする。たまらん。 本作は前作『ガラスの街』のアイデアを更に推し進めたかなり野心的な作品で、そのうえ前衛的なアイデアを成功させているのは本当に素晴らしい。たまらん。
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