きん "世界99 下" 2025年4月6日

きん
きん
@paraboots
2025年4月6日
世界99 下
世界99 下
村田沙耶香
読了。 上巻も刺激的な内容だったが、下巻もやはりという感じ。 上巻のそれとは刺激の志向性が別だった。ただやはりこの世界99の世界は、わたしたちの実世界となんら変わらないな、というよりむしろわたしたちの世界そのもの、汚い部分、綺麗であろうとする部分、見えているもの、見えざるもの、そういったものが全て似ているように思えた。 だからだろうか。空子の空は空っぽというセリフには共感しかなく、自分という存在を位置付けはコミューンによるものだというところはひどく心に響いた。そして差別というテーマを見ても、する側される側という一方向的なものではなく、される側にもまったくの差別がない状況なんてあり得ないし、立ち位置というか役割みたいなものを得ることは、快楽となりうるんだと本書を読んで改めて思った。それは自覚的無自覚的どちらにおいてもだが。 孤独は人を酷く単純させ、コントロールしやすくする。コントロールする側もされる側もお互いがお互いを貪っているという表現にはハッとしたし、そういう役割であることが快楽でありエンタメなんだと記されているところにはなるほどなと唸るばかりだったが、それは人という生き物が社会性のある動物であるからであり、どうしようもないことなのだろうとも感じた。 上巻の終わり、性欲はなぜにという私の問いに一つの答えがあったが、なるほどなという思いと、人は身体を持つからそれに縛られる、ということもなんとなく読んで考えたりしていた。 世界99のように、たとえクリーンな世界や見える化した世界を追求しようともそれは汚い部分や見えない部分をより際立たせ、ときにそれを目の当たりにして人を生きづらくさせるのではないかとさえ思う。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved