
ヒナタ
@hinata625141
2026年5月14日
将軍の都の客人
エイミー・スタンリー,
原直史,
石垣賀子
江戸時代末期に三度結婚に失敗し、四度目の結婚を拒否して自らの意思で江戸に出てなんとか生き延びようとした、常野という一人の女性のマイクロヒストリーを資料から読み解いた一冊だ。
常野は何か成し遂げた人ではない。公的な記録にも残っていない。歴史的な価値からすれば、とるに足りない人であった。ただ本人の手紙が実家の寺にきちんと保管されていたおかげでアメリカの研究者に見つけてもらえた、一人の庶民。
だけど本書を読むと、現代からは考えられないくらい封建的で自由のない社会の中で、田舎から出て江戸という都会でなんとか生きようとした中年女性である常野の生き様にぐっと引き込まれる。学校の授業で教えられる将軍やその妻たちの波瀾万丈な人生も面白いが、江戸の地べたを生きた常野の人生だって同じかそれ以上に面白い。だって将軍の妻より寺の娘であった常野のほうが自分に近い存在だから。この時代に常野のような生き方を自分が選べただろうかと、ハラハラしながらその人生を追いかけた。



