ごうき
@IAMGK
2026年5月30日
東京都同情塔
九段理江
読み終わった
「他人の言葉を継ぎ接擬してつくる文章が何を意味し、誰に伝わっているかも知らないまま、お仕着せの文字をひたすら並べ続けなければいけない人生というのは、とても空虚で苦しいものなんじゃないかと同情したのだ」
5月末、非常に大変なことがあり、精神が極めて不健康だったので、読むのが遅れてしまった。裏表紙の粗筋を読むに少しフィクション感の強い作品で、純文学を銘打っておきながらフィクション感の強い設定にやや嫌悪感を感じる私はずっと嫌厭してきたが、いざ読んでみるととても良かった。もう一度読むべき作品だろう。というのも、私はこの作品をまだ完全に咀嚼しきれていないからである。そんな状態で記録を記すことは若干憚られるが、まあそれも大切なことだろうから、一応書いておこう。
まず、作品の吸引力がすごい。読めば読むほど作品は私をどんどん呑み込んでいき、次第に右も左もわからなくなって、ただただ作品の中で波に揉まれてしまう、そんな感覚に陥った。非常に強い力を持った作品だ。建築とは無縁であろう作者:九段理江が全く人種の異なる人間にここまで思想を詰められるのが圧巻である。登場人物の緻密な人格形成には驚かされるばかりである。
本作は「AI時代の到来を預言する」とかで評価されていたようだが、少なくとも私にはそうは思えなかった。この辺りがまだ私が掴みきれていない部分だが、本作の主題は恐らく「言葉」そのものであろう。本作は言葉の持つ重さ・適切さ・価値から語感・構造・虚構性まで、言葉に備わる機能や性質について網羅し、言及されている。しかしその言葉に意味を持たせるには、恐らく主体性が大切である、というのが主題であろう(もしかしたら、違うかも)。AIの生成する文章の軽薄さ、あくなき寛容さが齎す主体の軽薄化、それらが発する言葉には重みがないのだろう。というのが、1周目でぼんやりと考えていたこと。とはいえ、主人公自身が建築であると自覚して終わるという展開から、まだ大事なキーワードを逃している気がする、「内部」とか「外部」とか…。うーむ、分からんな。言葉のフォルム(形式)とテクスチャ(手触り)とはまた一線を画す議論ではありそうだけれど……。
あとは、そうだな、単純に文体が好きだ。現象に対する内面の鋭敏さというか、世界を内面に落とし込む描写に非常に優れている。感覚が敏感すぎる。
虚構の言葉を操って言葉について語るなら、その語りもまた、虚構なのだろうか?
面白かった。必ず、もう一度読もう。



