
Suzuki
@finto__
2025年3月23日

イルカと否定神学
斎藤環
読み終わった
★★★★☆
「中井先生は、言語的なアプローチが線的な因果論を強化してしまいがちであることを繰り返し強調しています。「なぜ」「どうして」を問いすぎることは、「症状という結果には、かならず(単一の)原因があるはず」という因果論的な思考を、無自覚に強めてしまいます。これは否定神学的な作用の負の側面ですね。「なぜ」という問いには、背景に含まれる多様な要因を捨象(≒否定)して、唯一の原因に絞り込ませる圧力があるからです。
単線的な原因論は、本来ならば複数の要因が複雑に絡み合って症状につながるプロセスを単純化することで、「こんな原因があるなら解決は難しい」といった悲観論につながってしまう恐れがあります。
特に原因が「過去のいじめ」や「亡くなってしまった親からの虐待」といった解決困難なものと想定された場合に、そうなりやすい。その意味からも「なぜ」の禁欲は、個人精神療法に限らず、オープンダイアローグ的な対話実践においても重要な姿勢といえるでしょう。」169


