繁栄はん "博士の愛した数式" 2026年6月4日

博士の愛した数式
世間で高く評価されている理由が、読んでみてよく分かった気がする。 ​論理性や整合性、細部のリアリティを突き詰めるよりも、雰囲気。 物語全体を通して流れる「愛の形」は、静かな救いを求めている読者の心に、真っ直ぐに届く作品なんだろうなと感じた。 ある意味、聖書やおとぎ話を楽しむような、虚構なんてそんなもんでいいのかもしれないし、それが正解なのかもしれない。 ​ただ、特に後半。 一度クビになるシーンは、 物語を動かすための「事件」として、少し首を傾げた。 「事件そのもの」よりも、その出来事を通してキャラクターの心がどう変容したのか、あるいはどう向き合ったのかという「内面の真実」こそが読みたかった。というのが本音。 期待した分、少し残念だった。 また、ラスト、ルートの11歳から22歳までの怒涛の11年間が何も意味をなさなかったように感じた。 回想のようにしたかったのだろうなと、意図は分かる。 だがさすがに飛びすぎだし、さっきまであんなに丁寧にシーンを切り取っていたため、綺麗に作品を終わらせようとしているだけの文に見えてしまった。 ​物語の描写の選別や、構成の分配について、改めて深く考えさせられる一冊でした。
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