
いぬい
@inuiru
2026年6月3日
読み終わった
子ども時代を思い返すと「あれはなんだったんだろうな」ということが結構ある。そもそも私はメチャクチャ生々しく、しかも長編の夢を、繰り返し見る体質だったので、夢と現実の区別がつかないところがあり、いま思い出しても「たぶん夢だったんだと思うが、それにしては妙に鮮明なんだよな」となることが多い。
この本はタイトル通り、そういう「子ども時代のこわかったこと」を聞き書きで集めている。「おとなが過去のことを思い返して語る」かたちなので、どれもなんだか悪夢っぽい。
「犬屋敷」「それはベス」「病院獣」などは犬の話っぽかった。毛の長い犬のような獣の夢は私もよく見た。しかし狐狸の霊とはよく聞くが犬の霊というのはいるんだろうか、犬は基本的に陽気なのであまりこの世に留まるイメージがない。
わりと好きだったのは「花なら蝶」
" 『君が花なら僕は蝶』という正気を疑う一文からはじまるその手紙を、美佳子さんはすぐに捨ててしまった。"
ひどい言い草すぎて笑ってしまったがブスからラブレターもらうのって思春期の子どもには不名誉なことなんだろなあ。で、その厭〜な感じの話にふいに差し込む白昼夢……はこわがるとこなのかも知れないが私は「夢のなかで見る夢」みたいで好きだった。
「きつね」「焼肉ハナ」「おばけの世界」あたりの、現実が裏返される感じも好きだった。
" 「もちろん、ちがいます。当時の友だちとはもう付き合いないんですけど、妹にはちゃんとそのときの記憶がありますから。そもそも、蛙坂さんにこの話を聞いてもらったら? って言い出したの、妹なんです。よかったら電話で確認してみます?」
幸いにも、妹さんはすぐに電話に出た。
真希絵さんが見たという「きつね」について、おぼえていることがあればなんでも話してほしい、と頼んでみたところ、「ごめんなさい。そんな記憶は全然ないし、わたし、怪談って好きじゃないんです」 迷惑そうに電話を切られてしまい、真希絵さんは困惑の表情を浮かべていた。"
「信頼できない語り手」みたいな感じもあるな。
「焼肉ハナ」では友人一家と訪れた奇妙な焼肉屋のことが語られるが、その友人に話したところ「そんな事実はないが、そういう夢は見た」と言われる。「そういや、おまえ夢のなかの奴と似てるな」他人の夢と現実がつながるのってこわい。
「おばけの世界」では母とふたりで暮らしていたはずの語り手が「おばけの世界」とやらに連れて行かれ、どうにか自宅へ帰るとなぜかそこには「両親」がいた、という。存在感の希薄な父親、あるいは「新しい」父親とかを受け入れる儀礼的なもの……ってもっともらしく解釈することもできるんだけど、父親のいない世界といる世界、パラレルに行き来したのかもと思うとヒュッてなるよね。語り手が「もういちどおばけの世界に行きたい」と言ってるのが印象深い。
かかわったひとが死んだみたいな話も結構あるんだけど、「なんだったん?」みたいなこわさのほうが好き。
それにしても竹書房怪談文庫なんてレーベルがあったんだなー。
