つじんこ。 "傷の声" 2025年3月5日

傷の声
傷の声
齋藤塔子
わかりやすい虐待ではない。でも精神的苦痛が続く家庭。 それでも、親とのいい思い出もないわけじゃないから、嫌いになりきれない。子どもの頃はかかわる大人の注目を集めたくて問題行動を起こした。社会の中で支えてくれる人はいたたが、大人になっても得られない安心感。 途中までは筆者の体験に感情移入しながら読んでいて、かなりつらかった。だが、個人的に母との対話で違和感。なぜ、筆者はここまで自分に酷いことをした母に寄り添っていられるのだろう。 兄との対話を読んで、印象が変わった。筆者自身、気づいていないかもしれないが、筆者は幼少期から母の肩を持つことに慣れすぎていて、そこから抜けられなさがあるのではないだろうか。兄目線から見ると見える母の弱さ、不器用すぎる父のほんの少しのピュアな愛。そして筆者の母との距離の近さ。 兄が出て来てからは、兄の目線で読んでしまった。読む人の立ち位置によって感想は変わるだろう。兄の目線はドライ過ぎるかもしれないけど、ドライで客観的な目線に立つことで自分を守れているのではないだろうか。
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