
犬の耳
@dogear
2026年6月5日
陰翳礼讃
谷崎潤一郎
読み終わった
何となく敬遠してきてしまった大谷崎を最近読むようになった。
「陰翳礼讃」
教科書に抜粋があったのでその美しさはかねがね知っていたが、それはそれとしてやはり隅から隅まで美しい随筆である。
”十五夜の前日の新聞に石山寺では明晩観月の客の興を添えるため林間に拡声器を取り附け、ムーンライトソナタのレコードを聴かせるという記事が出ている。”
谷崎はこれを興ざめと捉えたようだが、当時の石山寺がそんなハイカラなことをしていたのかと興味深かった。
「ねこ」「客ぎらい」「旅のいろいろ」
こんな文章を読まされたら、谷崎のことを大好きになってしまう・・・!
小説家としての身分を明かして出かけるといろいろ面倒なので、素性を偽って三等席に乗り込んだり宿に泊まったりする谷崎、佐藤春夫や志賀直哉の犬好きを挙げて「僕はとてもああまでなれない」と言い切る猫派の谷崎、どれも人間味があって良い。
東京生まれ故に洗練されていない文士たちが嫌いなのに関西の異文化にはなじんでいるのも、『細雪』の片鱗が見えて納得してしまう。時代に迎合せず自分の芸術を貫いた誇り高い作家の姿が随筆にも表れているのだなぁとしみじみしてしまった。
【メモ・各作品の初出年】
陰翳礼讃 1933
現代口語文の欠点について 1929
懶惰の説 1930
客ぎらい 1948
ねこ 1930
半袖ものがたり 1935
廁のいろいろ 1935
旅のいろいろ 1935
