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@nininice
2025年3月23日

インド夜想曲
アントニオ・タブッキ,
アントーニョ・タブッキ,
須賀敦子
読み終わった
借りてきた
三月二十六日
今年最初の桜の花を、不意打ちのように目にした。午後の柔らかな光に溶けるようにきらきらと咲いていた。お昼ご飯を食べながら、『インド夜想曲』を読み進めている。
彼は言葉と言葉のあいだに間を置いて話し、ある大学で話されるように、接続詞をほんのすこし、ためらうように伸ばす、ひじょうに優雅な英語を話した。「practically …actually 」と彼は言った。
三月二十八日
桜が咲き同時に新緑が芽吹く。この違和感に今年もまだ慣れてはいない。暖かいのか寒いのかもよくわからない。なんとも不安定な春。読了。
須賀敦子の訳者あとがきに、『インド夜想曲』はより哲学的というのか、詩(抒情詩と制限する必要があるだろうが)の世界をめざしていると言えるのではないか、と書いてある。うーん、途中まんまとスパイ映画を見ているような感覚になり、スパイ映画に興味のない自分は、むしろもっともっとガイド・ブックのようなものや、それこそ須賀さんの書く随筆のようなものを読みたいと思ってしまった。途中で出会う人々が、人間というよりわざとらしいキャラクターっぽく思えてしまって。でもそれは意図されたものなのだろうか?
途中、これはあとでメモしよう、と思った一文があったのだけど、読み終えたあとに戻って探してももう見つからなくて、見えていたものがいつの間にか消えてしまうこの感覚は、この作品の読了後の気分とぴったり重なっている。
