時雨崎 "小説 劇場版モノノ怪 蛇神" 2026年6月7日

小説 劇場版モノノ怪 蛇神
一つ人間の社会を形成すれば、必ず歪みが生まれる。集団としての善に個人を潰す悍ましさも、個人の欲を押し通す醜さも両方描いている。前者は傲慢に映るし、後者は幼稚で愚かに見えるけれど、そのどちらかの善悪を断ずる物語ではない。ただ両方とも在るものは在るだけ。個の心を大事にすることも、自分の外側を大事にすることも、どちらにも全てを振り切れないまま人の世はそのあわいで続いていくしかない。誰かが零か万かで他すべてを切り捨てようとすると崩壊が始まる。他者と縁を繋ぐ限り果てしなく情念を生むことは、人の営みと切っても切れない。 TVシリーズから好きだったけど3作合わせてようやくあのモノノ怪の世界観と劇場版の世界観が自分の頭の中で地続きになってくれた気がする。 唐傘の初読時は、モノノ怪の割に…情念の踏み入りが浅めだな?と思ったが3作通しで振り返るとそんなこともないのかも…? 幸子の心情の変遷がものすごく良い。本当に良い。頑なに個であり続けた幸子の心へ不意に刺さった「子」からの言葉は、TVシリーズの「座敷童」でのテーマを踏まえた上で更に現代の悲観的になりがちな死生観を受け止めた、新たな問いかけだと思う。
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