いわみほ "PRIZE-プライズー" 2026年6月5日

PRIZE-プライズー
作家の天羽カインと担当編集者の緒沢千紘を軸に物語が進む。カインは「どうしても、直木賞が欲しい」。文学賞の選考過程や編集者の役割についても書かれている。作家の承認欲求と編集者の承認欲求とエゴ。最終的に他者承認よりも自己承認が上回るのは作家としてのプライド。PRIZEよりもPRIDE。1文字違いなのは偶然なのか意図的なのか。 千紘はカインから信頼を得て、2人の距離は近くなっていく。千紘は「私にしかできない」「他の人には任せられない」と思うようになり、編集部内でも危ういと言われるようになる。編集者はどこまで介入していいのか問われる。 自分が仕事に乗っているときには、客観的に自分のことが見られなくなり、他者の言うことに耳を傾けられなくなる。これは作家と編集者という関係でなくとも、誰しも起こりうることではないか? カインとその周囲の人たちの距離感の違いも様々。編集者の石田三成、夫、サカキ。特に気になったのは、新人作家市之丞隆志とその担当者の藤崎新との関係。市之丞は藤崎の助言に耳を傾けずに、自分の書きたいように書く。そしてその作品が認められていく。千紘と藤崎の作家との距離感は対象的。藤崎は「待つ」しかできなかったのではないか。「待つ」は待っている側が相手に委ねているようで、「待つ要素、期限など」の権力性も併せ持っているように感じた。もちろん、それゆえの心労もある。 私はこの小説から、人と人との距離感や支えることの難しさを感じた。でも1番に思うのはエンターテイメントとしての面白さ。一気に読み進めたけれど、感想を言語化するにはちょっとだけ時間が必要だった。
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