
Ryu
@dododokado
2026年6月8日

読んでる
「「夜は十時ごろには二人とも寝ちゃうから。何しろよく遊ぶ二人でしょ、だから、ダンナが帰ってくるまでにだいたいそこで一度眠るでしょ。
朝も洗濯物干したあとでお昼まで寝ることもあるし、午後お昼寝することもある──。
ま、でもやっぱり、眠るんだったら午前中より午後の方がだんぜん気持ちいいわね。
横になってるからだのまわりをゆっくり空気と時間が流れてるみたいで、なんかフシギィなノスタルジーに包まれる感じがするの──」
真紀さんは合い間にビールを一口ずつ飲んでいて、ぼくは「不思議なノスタルジー」と繰り返した。
「なんて言うかさあ、ラテン・アメリカの小説なんか読んでると、村じゅうが微睡んでるような描写が出てくるじゃない。
天井で扇風機がカラカラ回ってるような駅の事務室があっていそこに一日一本しかない長距離列車が入ってくるんだけど、降りてくる人はたった一人で、改札には誰もいなくて、事務室からラジオの音が聞こえてくるからその中を覗き込むと駅員がうたた寝してて、ラジオは革命に失敗したテロリストのグループが山に逃げ込んだっていうようなニュースをしゃべってて、駅を出ると物売りのおじいさんが道端の日陰で荷物に寄りかかって熟睡していて、その向こうではバナナ畑の大きな葉っぱがゆっくり風にそよいでいるっていう、そういう感じ」
真紀さんが前もって準備していたみたいにすらすらしゃべったからぼくは笑ってしまった。」60-1
