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@bunkobonsuki
2026年6月8日
母性のディストピア 1
宇野常寛
私が宇野常寛の書籍にはじめて接したのは、『母性のディストピア』だった。読み始めて数分、その激越に恐れ慄き、当時は戦後の思想史もまったく知識がなかったので、早々に読むのを諦めた。
『リトル・ピープルの時代』『遅いインターネット』『庭の話』など他の書籍を読んで、改めて本書を読んでみようと思い至った。
『母性のディストピア』は二部構成となっており、「接触篇」が第一部、「発動篇」が第二部となっている。接触、発動という語彙は、富野由悠季のアニメ映画『伝説巨神イデオン』から来ている。
タイトルに関連していることもあってか、「接触篇」では富野由悠季の思想史に紙幅を割いている。近年の富野作品は人情的な温かみを感じさせるものが多く、「白富野」と呼ばれることもある。これはかつて過激な作風を志向した「黒富野」と対比される表現である。
だが、本書を読むと「白富野」の正体とは諦念という解釈が浮かぶ。戦後の世相に対して苦しみながら作品に思想を込めていたが、90年代を境に現実に打ちのめされた結果、白くなってしまったのだ。

