糸太
@itota-tboyt5
2026年6月8日
忘れられない日本人ーー民話を語る人たち
小野和子,
櫻井拓,
清水チナツ,
菊池聡太朗
読み終わった
民話とは、土地に根づいた昔話である。ストーリーの合間からは、現代では失われつつある風習や社会常識などを読み取ることができる。だから学術的な資料としても価値は高い。まるで古代史の謎が隠された遺跡みたいだ。
でも、よく考えてみると、それは民話の一側面に過ぎないのかもしれない。
民話は、語る人とそれを聞く人がいる場があって初めて立ち現れる。つまり、その場その場で生まれては消えていく。消えてしまうのではあるが、聞いた人の体の中には何かが残る。そして、それぞれの人生の中でゆっくりと熟成されて、いずれ聞かせたい人が目の前に現れた時に、また新たな民話としてこの世界に生まれ出てくる。
本書では、民話を語る人に焦点を当てることで、民話がまさに息づいている場を描き出そうとしている。私には、この試みが見事にはまっているように感じた。途中で挿入される民話の、なんと温もりのあることか。いままで読んできたものと全然違う。胸に響く。
もしかしたら民話とは、内容以上に、こうした「語りの場」こそが主役なのかもしれない。語り継ぐという場面は民話以外にも色々あるが、何より大切なのは、場をどうつくっていくかなのかもしれない。
