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@naschoko
2026年6月8日
タイム・シェルター
ゲオルギ・ゴスポディノフ,
寺島憲治
読み終わった
借りてきた
認知症やアルツハイマーを治療する「過去のためのクリニック」。ガウスティンとその助手である語り手はいつくもの時代を再現し、匂いや物語を集め、過去をよみがえらせ始める。
とてもよかった。
認知症などにより失われる個人の記憶と、「輝かしい過去」へのノスタルジーといった集団の記憶という二つの「記憶」が軸。
第一章では個人の記憶が断片的に語られる。順序立てて語られるわけではなく、輪郭が曖昧なまま話が進んでいく。過去があたかも無害であるような顔をしてじわじわと広がっていく様が不穏。
第二章以降は雰囲気が一変する。過去はすでにあらゆるところに忍び込んでいて、欧州各国は「過去を選択する国民投票」によりどの年代に回帰するかを選ぶことになる。
過去へ戻ることで記憶をなくし、それによって未来までもが失われる。ポピュリズムが台頭する今、過去が蘇って世界が崩壊していく様子には考えさせられる。「記憶喪失で最初に消えてなくなるのは、未来の観念そのものである」という一文がいい。
祖父母が亡くなり両親も高齢となった。私の子供の頃を知っている人がいなくなったら、私個人の過去はどこへ行くのだろうか?「個人の記憶」のエピソードもいつかは訪れる未来であり身につまされる。


