にっかり青江 "風と共にゆとりぬ" 2026年6月8日

風と共にゆとりぬ
朝井リョウ節が炸裂する一冊  今回も期待を裏切らない。前作と比較すると少し真面目なトーンの話も混ざっており、読後の学びも多いように感じられた。  特に「肛門記」は、笑いを取るだけではなく、実用的な知識としても興味深かった。痔瘻については漠然としか知らなかったが、その治療過程や注意事項を詳細に追体験できたことは、意外にも有意義な学びとなった。  ただ、将来、自分がカテーテルを挿入するような事態に陥ったら、間違いなく朝井リョウを恨むだろう。今から想像するだけで怖くて仕方がない。  本書の中で筆者は「自分には特別な経験が不足している」といった趣旨の発言をしていた。しかし、何も特別な体験だけが価値あるものだとは限らない。普段の何気ない出来事であっても、解像度を上げて観察し、思慮を巡らせることができれば、新たな発見がある。それは他者の共感を呼ぶ物語にもなり得るはずだ。人生の深みとは、日常をどれだけ深く掘り下げられるか、その視点の鋭さからも生まれ得るものだと強く感じた。 ぜひ次の三部作も、彼が日常をどう切り取ってくれるのか楽しみにしている。
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