阿久津隆 "土にまみれた旗" 2026年5月27日

阿久津隆
阿久津隆
@akttkc
2026年5月27日
土にまみれた旗
p.175 弓形に並ぶ歯を凶暴にむき出し、青銅色をした爆発を起こしたかのように高く飛び跳ね、黒人が身を投げだして腹ばいになる。ベイヤードは、サーベルのように切りつけてくる蹄の下でひらりと身をかわした。馬が炎のように千々に体を動かしながら旋回すると、見物人たちにはベイヤードが馬のあごに手綱の端をうまく巻きつけていたとわかった。そして彼らが見ていると、馬は再び後ろ足で立ち、ベイヤードを地面から引きずりあげ、その肉体をぼろ切れのように、さっと弧を描いて振りまわした。それから馬は動きをとめ、身を震わせた―巻きつけた手綱で、ベイヤードが鼻孔を締めつけたのだ。そして彼はいきなり馬の背にまたがった。馬は頭を下げ、目玉をぐるぐるまわしながら立っており、波打つ毛並みは揺れる舌となって、再び爆発しようとしていた。 それで馬とベイヤードは駆け出し、木戸を木っ端微塵に砕けさせて轟音を響き渡らせ、道に出て、走っていって、すごい場面で、車の次は馬の疾駆で、スピードに次ぐスピードという感じで、盛り上がるというか、強烈な展開だった。しばらく走るとベイヤードは振り落とされてしっかり怪我をした。それから酒を飲んだ。ベイヤード、だいぶしんどそう。
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