土にまみれた旗

土にまみれた旗
土にまみれた旗
河出書房新社
2021年6月29日
14件の記録
  • 阿久津隆
    阿久津隆
    @akttkc
    2026年5月17日
    今度はキャスピーという青年が戦争について語っていて、この人は誰だろうと思いながら僕は話を聞き、家族たちは、「それで、どうしたんだ?」と食い入るように話を聞いた。 p.86,87 キャスピーはコーヒーを飲み干した。「おれはもう、白人の言うことなんてきかねえぞ、中尉だろうが、大尉だろうが、それとも憲兵だろうがよ。戦争は白人連中に、黒人なしじゃやってけねえことを見せてやったんだ。踏んづけて土まみれにしときながら、困ったことがおっぱじまると、「お願いしますよ、黒人のだんな。さあ、ラッパが鳴ってる方へお願いしますよ、黒人のだんな。おめえさまが国の救い主ですよ」ときたもんだ。けど、これから黒人は、戦争の恩恵とやらを受けることになるんだ。それも、すぐにだぜ」 「そうか」とサイモンはつぶやいた。 ここでいう戦争は第一次大戦で、これまでフォークナーはずっと南北戦争だったから、ずいぶん未来になってきたものだと思うし、なぜか、もっと古い話を聞かせてほしい、という気持ちにもなった。
  • 阿久津隆
    阿久津隆
    @akttkc
    2026年5月16日
    今日のフォークナーはあまり面白く感じなくて、日によるものだった。
  • 阿久津隆
    阿久津隆
    @akttkc
    2026年5月15日
    p.56 月が東方の黒々とした丘陵の壁の彼方に出ており、谷間を穏やかに照らしていた。馬車道に沿って生えている樫やニセアカシアの木の向こうで、子供の風船のようにのぼっている。ベイヤードは月光の下、ベランダの手すりに足をのせて座っていた。葉巻がときおり赤く光った。すぐ近くの草むらからはコオロギの甲高い単調な鳴き声が聞こえ、遠く離れた木々のあいだからは若い蛙たちが妖精の笛のような音を、無数に湧きあがる銀色の泡のように出している。 ここを読んだ瞬間、たぶん「コオロギの甲高い単調な鳴き声」あたりの瞬間に、ぶわっと、大田原の、母方の実家の感じがやってきて、「うわっ」とびっくりした。小さなころは泊まりにいったときに寝るのは一階の奥の畳の部屋だったり、おばあちゃんの部屋だったりだったが、高校生とか大学生になって一人で行って泊まるときは二階のいとこがかつて使っていた部屋になったりして、その部屋は腰の高さのところに窓があって向こうが奥行きの狭いベランダが、そんなにそこに出た記憶はないけれど、あって、そこに出たら夜であれば空は月と星しか光はたぶんなくて、夜に出たことはないけれど玄関を出て庭があり、舗装が途切れるところからは畑になり、少し進めば竹林が壁になって高くまでそびえて、ぽっかりと空いた林の入り口から下り坂になって、下って林を抜けたら田んぼが広がっている。どこまでがうちの敷地なのかはわからないが、考えてみたら田んぼ側からは誰でも入ってくることはできるわけで、馴染みのない真っ黒の、静かな、あるいは虫と蛙の音で騒がしい夜のなかで、境界のない家というのはどこかで意識はされていただろう、だから不安だったということでもないけれど、特別な夜ではあったはずで、その感じが急にやってきてうろたえた。そのあと戦争から帰ってきた孫がハイテンションで不機嫌に話し続けて、「暴力とスピードと死の物語」が口から溢れ、何度注意されても声は高まって、抑えられない様子だった。「ジョニーのことを話しておくれ」とミス・ジェニーが話して、ジョニーというのはヤング・ベイヤードの兄弟とかっぽかった。戦死したっぽかった。
  • 阿久津隆
    阿久津隆
    @akttkc
    2026年5月14日
    ベイヤードの屋敷のところで犬が登場した。二匹だ。ベイヤードが馬車から降りるのを待って、それからベイヤードが馬に乗るのをおとなしく待った。 p.50 そうして彼らは、その生涯の暮れなずむ黄昏が、二つの生命を生み出した優しい大地の上で平和な終わりへと向かって近づいていくあいだ、季節ごとに変化する牧草地や野原や森林を静かに急がず歩いて、午後をともにすごすのだった―人間は馬に乗り、まだらのセッターはその隣に重々しくつき従いながら。若い犬の方は二歳にもなっておらず、彼らの落ち着いた社会に長く調子をあわせるには、本質的にあまりにもせっかちだった。ときには彼らと一緒に出発したり、どこかからやってきて野原の真ん中で彼らと一緒になり、はねをとばし気負い立って、走りまわったりもしたが、それは長くは続かなかった。すぐに舌を垂らし、尾をぴんと張って鋭く振り動かし、彼を猛り狂わせる捉えがたい匂いを追って走り去らずにはいられなくなる。世界はそうした匂いで彼をとり囲んでおり、ありとあらゆる藪や雑木林や峡谷から彼を誘惑するのだった。 ほっこり。フォークナーとは思えない穏やかな場面だ、と思ってから、そういえば僕は短編の「熊」をすごく面白く読んだような記憶があり、それがどんな話だったかは覚えていないけれど、実はフォークナーの描く動物が好きだったりもするのだろうか、と思ってから、短編まではいいかなと思っていたけれど、『熊 他三篇』も読んでもいいかもしれないし、短編がいいなら、『エミリーに薔薇を』も読みたい気持ちにもなってきたし、そう考えてみると、短編でフォークナーがどんなふうに小説を組み上げるのか、がぜん興味が湧いてくる感じがあった。
  • 阿久津隆
    阿久津隆
    @akttkc
    2026年5月12日
    ジェニーが晩餐会みたいなところにいて、サイモンがたぶんその家の台所に入って、馴染みの顔らしく、何か食べるかと料理番に訊かれると「アイスクリームをちょっとと、野菜をいくらかもらうとするよ」と言って、アイスクリームについてしばらく話し、そうしていると女中が「ねばねばした液体の入ったボウル」をサイモンの前に出して、多分それがサイモンが所望したもので、サイモンは「溶けたアイスクリームの中にホウレン草を入れ」て食べていて、アイスクリームの中にホウレン草、と私は考えた。
  • 阿久津隆
    阿久津隆
    @akttkc
    2026年5月11日
    まだ面白くはなく、フォークナーの始まりの時間が面白くないのはそういうものだから、そういうものだと思いながら読む。
  • 阿久津隆
    阿久津隆
    @akttkc
    2026年5月10日
    夜、もう一度最初のパラグラフから始め、死者が部屋の中で強い存在感を放っていた。縮約版のタイトルは『サートリス』だからこの死者であるジョン・サートリスの物語ということになるのだろうか。今が現代で、ここから過去に過去に時間が雪崩れこんでいくのだろうか。そのとき息子のオールド・ベイヤードたち現代の人物たちは、どんなふうに物語る媒体、物語を反響させる空洞になっていくのだろうか。
  • 阿久津隆
    阿久津隆
    @akttkc
    2026年5月10日
    昼寝のために布団に移動し、そこで『土にまみれた旗』を読み始めることにして、ずうっと文庫本を読んでいたので、どでかい単行本はどでかく、重く、だから持ち上げることはなく、開いた。 p.10 いつものように、フォールズ老人はジョン・サートリスをその部屋に連れこんだ。郡の救貧農場から三マイルの道を歩き、ある匂い―彼の色あせたオーバーオールにしみついた、汚れてはいないが埃っぽい匂い―のように、死者の霊をその息子が座っている部屋に連れてきたのだ。そこで彼ら二人、つまり生活保護者と銀行家は、死をこえて戻ってきた男と一緒に半時間ほど腰をおろしていた。 魅力的な始まり! 『アブサロム、アブサロム!』のクェンティンとミス・ローザがミス・ローザの家で対峙する始まりと似ている感じもあって、それにしてもあのクェンティンは、ただ無垢な、空っぽの空洞だと思っていたクェンティンが、そんな存在だったとは、と『響きと怒り』を経て思うというか、もうその名前が響かせるものがまったく変わった。 その段落だけ読んで昼寝を始めた。
  • chroju
    chroju
    @chroju
    2026年5月9日
  • 阿久津隆
    阿久津隆
    @akttkc
    2026年5月8日
    海外文学のほうに行ってラテンアメリカ文学のところをチェックし、それからアメリカ文学のところに寄っていき、フォークナーを探した。『八月の光』があり『野生の棕櫚』があり、それから『エミリーに薔薇を』があってこれは『野生の棕櫚』と同じ中央公論新社の薄紫の文庫で、短編集とあった。その横に大きなハードカバーがあって『土にまみれた旗』とあり、どでかいハードカバーで、黒と赤の矩形とおびただしい文字で構成されたかっこいい装丁で、長編のようだった、知らないタイトルで、スマホを出して調べてみると『サートリス』は縮約版で、その完全版がこれということらしかった。『サートリス』はタイトルは知っていた。それでウィキペディアを見ているわけだが、フォークナーの作品年表を見ると『サートリス』が1929年の刊行で『響きと怒り』も1929年の刊行で、このどでかい本とあのどでかい本を同じ年に出しているというのはいったいどういうことなんだと慄き、ともあれフォークナー熱は止まらないのでワンモアフォークナー。
  • 「ヨクナパトーファ・サーガ第一作」
  • 鳥澤光
    鳥澤光
    @hikari413
    2025年8月15日
    〈LE LABO〉のパフュームに刺激されて久しぶりに再開。ちょっとずつ読む。 フォークナーは光の筋。埃。パフンとした足音。
  • aco
    aco
    @_accco_
    2025年3月6日
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved