
阿久津隆
@akttkc
2026年5月29日
読んでる
ベイヤードたちはまだ酒を飲んでいて、それから楽器奏者を集めて夜で、ひっそりと車を走らせて、ある家の前に停めた。
p.192
黒人たちがおりて、コントラバスとギターをとり出した。三人目は鍵が霜のように覆う細長い管楽器を持ち、その上ではまだらに落ちる月光が青白い点となってきらめていていた。三人の黒人は頭を近づけて立ち、ひそひそ話しあい、楽器の弦に手を触れて、もの悲しい、低くおさえた和音をかき鳴らした。それから、クラリネットを持った黒人が、それを持ちあげて唇にあてた。
古い曲だった。洗練され、形式的に複雑なものもあったが、演奏されるとそうしたところは消え去り、代わりに一様にもの悲しさを帯び、音に切れ目がなくなってリズムは単純なものとなった。曲は豊かな、もの悲しい和音となって銀色の大気に漂い、単調な繰り返しとなって、見通しの悪い月明かりの道に沿って薄れ、消えていった。
きれいな静かなうっとりとするような優しい場面で、なんだか不思議というか、フォークナーを読んでいる感じがあまりしないというか、時代の感じもあってだろうけれど、車の疾走、それから奏でられる音楽、その感じはなんだか、フィッツジェラルドを読んでいるみたいだった。