
ちゃせん
@arbata_caj
2026年6月9日

佐藤の告白
中島花野,
藤紘
読み終わった
読書日記
中島花野さんの装画に惹かれて。
とある中学、佐藤という男子生徒が鈴木という男子生徒に告白した、という噂が広まったことをきっかけに巻き起こる波紋を描いたお話。「佐藤の告白」というタイトルだし、表紙で一番目立つところにいるのも佐藤なのだが、4話+エピローグで構成されるお話は全て、彼以外の人物の一人称である。佐藤に想いを寄せるひなの、ひなのや鈴木の担任である岡本、佐藤の母、そして鈴木。佐藤自身が何を考えているのかは明かされないまま、さまざまな関係や距離から見た佐藤という人物が描かれ、そして語り手の心も揺らぎ、時には荒れ、そして変わっていく。
心無い噂に晒される佐藤を守りたくて、ゴリラになりたいなどと願うひなのの恋する乙女っぷりに笑ったりもしつつ、全体として切なくみずみずしく、そしてあの「学校」という狭い世界に漂う閉塞感やひりついた空気を感じる物語だった。
鈴木の語る4話目でことの真相は明らかになるのだが、ひなのも岡本も、そして佐藤の母さえそれを知ることはない。エピローグでひなのが見たような、2人だけの大切な関係や時間がそこに流れているような気がした。
読み始めて夢中になって没頭した小説はとても久しぶりで、子供の頃の読書体験を思い出した。とてもとても良い作品だったと思う。


