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ちゃせん
ちゃせん
@arbata_caj
記録用 小説、新書など
  • 2026年9月19日
    僕の明日を照らして
    何とも飲み込むのが難しい物語だ、というのが読了後の第一の感想。シングルマザーのお母さんと結婚して父親になった優ちゃんから暴力を受けながら、被害者である隼太は優ちゃんとの生活を守りたくて、必死にそれを隠す。虐待の本を読んでみたり、ふたりで日記をつけたり、カルシウムをとってみたり、根拠があるのかないのかわからない努力を必死に続ける。 なぜここまで隼太は必死になるのだろうか? 父を亡くし、寂しく不安に過ごす一人の夜をずっと恐れていた。優ちゃんを失って、またあの夜に戻りたくない。単にそれだけなのだろうか? 母親は夜の仕事をしながら、栄養満点の料理を毎日作っていてくれる。隼太を「手のかからないいい子」と思っていて、優ちゃんとの抜き差しならない関係にも、捨てられた日記を覗くまで全く気づかない。そんなお母さんを隼太は愛しているのだと思うけど、同時に思春期の自立が始まるにつれてどこか冷めた目で見ている。母親だけではなくて、クラスメイトに対しても、先生に対しても、先輩に対しても、隼太はかなり冷めた目を向けている。恋人ができても同じだ。人間関係に期待してないというか、見切りが早い子だ、という印象を受けた。 そんな隼太が唯一繋ぎ止めたくて必死になる優ちゃん。解説にもあったが、二人はきっと似たものどうしなのだ。お互いに必死に、相手にだけは嫌われたくない、と思うほどに。 お母さんも含めてそれを飲み込んで、純真な子供ではない、善も悪も内包する自立した人間として立つことができるのか。この家族が向き合っていくべき明日は、そういうものなのだろうな、と思う。
  • 2026年9月17日
    ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2
    第二巻。やはり平易ながら変わらぬ文章のうまさでするすると、あっという間に読み終えてしまった。中学二年になり、息子さんが自立した個人として成長していくとともに、だんだんと親に話さないことも増えていく。それでも家族みんな真摯に、率直に対話をしていると感じる。社会を信じるとはどういうことか、ということに考えを巡らし、ありきたりな結論になってしまうのが歯がゆい、やはり聡明で思慮深い男の子だと思う。息子の成長とともに彼自身の「ライフ」が確立され、親にも話さないことが増えていくがゆえに、ここでこのシリーズは完結なのだと思う。家族を題材にしたエッセイの是非が問題になることもあるが、ある意味で筆を置いたことが親として、文筆家としての一つの真摯さなのかもしれない。
  • 2026年9月15日
    ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
    読んでみて、息子さんの思慮深さに驚く。とともに解説を読んで、中学生だからとみくびってはいなかったか?との反省もある。多様性とはなんぞや、と聞かれると。なかなか一言で言い表すことはできないような気がするけれど、英国に暮らし、経済的、社会的、民族的、さまざまな軸で多様な人の集まる環境で育つ「ぼく」と「母ちゃん」を通じて、ここ日本に暮らす自分にも気づくきっかけや考えの種をくれる、そんな一冊。差別やいさかいが起こるのならば、みんな均一の世界が本当に良いのだろうか? この本が書かれた当時よりもさらに寛容さがなくなり、対立や分断が激しくなりつつある2026年の今、多様性の縮図のような学校の様子を読み、また考えてしまう。 だいぶ息子さんの内面にも踏み込んだ文章であるようにも思ったが、きっと日頃からしっかりと親子のコミュニケーションをとっているのだろうな、と思った。そしてブレイディみかこさんの文章はとてもうまく、読みやすくするすると染み込んでくる。
  • 2026年9月13日
    焔に手をかざして  新版
    引き続き石垣りんを読む。戦前戦中戦後を生き、生活に根ざした文章を紡いだ詩人らしく、エッセイにもくらしが根付いている。謙遜やユーモアをまじえつつも、そこには社会や国家、政治を含めて世の中を見つめるシリアスな眼差しものぞいている。表題である「焔に手をかざして」含め、心の中にそっとマッチの火を灯してくれるような文章。
  • 2026年8月27日
    ユーモアの鎖国 新版
    詩人である石垣りんのエッセイ。といっても、その中に詩もたくさん紹介されていて、本人がその背景を語っていたりする。大正に生まれ、働きながら家族を養い、戦前戦中戦後を生きた石垣りん。ユーモアを持ちながらも、人生の苦しみや戦争への怒りを抱き、現実的な目線で世界を見つめるそのまなざし。なんだか今の時代に不思議とマッチするものが多く、時にゾクっと背筋に寒気が走るような感覚を覚えた。表題作であるエッセイに、国だとか正義だとかいうものってなんだろう、と改めて考える。これもまた、今の時代だからこそ響くものがある。
  • 2026年8月21日
    ひつじ探偵団
    ひつじ探偵団
    映画を見たので、原作を手に取った。映画とは全く違うストーリーで、ひつじたちの大活躍の中に深い思索やダークな要素が散りばめられている。読み始めてから乗るのに少し苦労したが、個性豊かなひつじたちが物語を牽引して、クライマックスまで先が気になって読み終えることができた。
  • 2026年8月11日
    西遊記(下)
    西遊記(下)
    長く続いた三蔵法師一行の旅も、これで終わり。長い長い旅の中で、妖怪との戦いあり、さまざまな人との出会いあり、古典ながら堅苦しさや古臭さがなく、生き生きと個性豊かな登場人物の大活躍に心奪われてしまう。まるで講談を語り聞かせるような君島久子先生の名訳もあって、さながらお話に聞き入る聴衆の気持ちであった。荒くれ者で乱暴者の悟空、食いしん坊で少し抜けている八戒、やや地味なきらいはあるが物静かで実直な悟浄、そして誠実ではあるが意外に臆病で頭の硬いところもある三蔵、現代劇にしても十分なくらいのエンタメ性である。 子供向けに刊行された本ではあるが、大人が読んでも新鮮に面白い。いまこのとき、西遊記をしっかりと読むことができてよかったなあと思う。
  • 2026年8月6日
    永遠の詩(5) 石垣りん
    永遠の詩(5) 石垣りん
    やはり一本通った芯や生きることへの眼差し、力強い言葉など、石垣りんという詩人の立つ姿を見ているようで心に響く。
  • 2026年8月4日
    ぼくらがやりたい10のこと
    児童書。偶然「やりたいことリスト」を作って達成することになった四年生の栄太とゴウ。あまり仲良くもなかった二人だけど、一見強引なゴウが引っ張る形でいろんなことにチャレンジしてみることに。それぞれに抱える親との関係や家庭の悩みも関わりつつ、他のクラスメイトも巻き込みながら「やりたいこと」が広がっていき、二人ともが大きく成長する。親が親として悩む部分にもフォーカスがあたっていて、一方的に悪者になっていないのが個人的に良かった。やりたいことを尊重しつつ、年長者として支えてあげる、そんな大人になりたいものだ。
  • 2026年8月3日
    (新装版)石垣りん詩集
    戦争の時代を生き抜き、父と継母、弟たちを抱えて一家の大黒柱として働きながら詩を書いた石垣りんの詩集。この人の詩は高校生のときのワークかなにかで読んで以来印象に残っているのだが、感情的にならずどこか冷徹な目線で語りながら、抑圧されたものや怒り、生活というものの生々しさ、生きることのグロテスクさのようなものを見据えているような感覚がある。 平易なことばで語られる詩を読みながら、ときどき抜身の刃を押し当てられたようなぞくりとした寒気を覚えたりする。家というものに苦しみ、戦争に苦しみながら、それをこうした形で作品とする底知れない強さ。一読しただけではわからない魅力とおそろしさがある気がした。 このご時世のこの8月に読む意味があった、そんな一冊。
  • 2026年8月2日
    バイ・タイム
    バイ・タイム
    ポストアポカリプス、というと少し違うが、大災厄、高次生命体との衝突により、時の歪み「渦」が発生するようになった時代、妻を失い、残された息子と共に暮らしながら、歪みを正す「整時士」として働く佐藤スバルの物語。 何話かの連作になっているが、歪みの原因となるのは親と離れ難い子の思いであったり、親との関係に悩む子の苦しみであったり、親も知らない子供同士の関係にあったりする。親としてのあり方に悩み続け、息子の成長をどこか遠くに感じながら生きているスバル。作中を貫く親子の在り方や時間というものの捉え方が、夏の鮮やかな色彩のなかでせつなく浮かび上がってくる。劇的になにかが解決するような物語ではないのだが、スバルの関わった子供たちはみな、歪みとの遭遇を経て良い方向に進んでいるような気がする。
  • 2026年7月31日
    記憶の果ての旅
    ただ楽しく遊ぶ毎日を繰り返していた「ぼく」が、ふと疑問を持って旅に出るところから始まる物語。何も覚えていない、知らないこと(というより、忘れていること?)ばかりで、描写の不自然さが後の場面で次々に回収されていく。ゲームのような世界観の中で、明かされる真実は自分が予想していたものからさらにひとひねり、といったものだった。感情をあらわす言葉や自分の名前、生命活動そのものの概念という欠落がどんどん埋まっていく構成だけに、ぼんやりした霧の中から輪郭が浮かび上がってくるような不思議な読み味の小説だった。
  • 2026年7月29日
    西遊記(中)
    三蔵法師一行が西へと旅する道中の物語、いよいよ冒険活劇らしく、さまざまな妖怪との戦いが繰り広げられていて楽しい。三蔵は意外に強情で悟空のことを信用しないし悟空もお師匠様にキレるし、猪八戒はそれなりにいい加減だったりする。静かな沙悟浄が実は一行の良心なのかもしれない。キャラクターの個性が尖りまくっていて、講談や紙芝居のような小気味よい訳文のテンポも手伝いするすると読める。
  • 2026年7月26日
    スタートライン 風のなかへ
    児童書。ひょんなことから陸上クラブに入った「ぼく」こと逸輝と親友の「みずくん」こと水木くん。特に興味があったわけでもないけれど、走ることの魅力に気づき、体も心も大きく成長していく。努力しても挫折することはあるけれど、腐らずにやりつづけることにもきっと価値はある。おじいちゃんを始めとした家族の見守りやみずくんとの爽やかな友情が心地よい一冊。今年の読書感想文の課題図書である「まだまだここから」でも思ったが、酒井以さんのイラストは子どもらしい可愛らしさやまっすぐさ、温かさを感じて素敵。
  • 2026年7月24日
    タスキメシ
    怪我で陸上を辞めようとしている眞家早馬、才能あふれる弟の春馬、共に陸上部で3年間走ってきた助川亮介、早馬と出会い、ともに料理をすることになった料理研究部の井坂都。陸上と料理をめぐる高校生たちの青春と葛藤の物語。早馬が弟に抱く複雑な感情も、兄として立っていたいという気持ちも、どっちつかずな自分の置き場を求めたい気持ちも、複雑で重たくて、そしてリアルだ。春馬も助川も、早馬があっさり去ってしまいそうなことを悔しく思っているが、なかなか本音をぶつけられない。都は都の思惑で、早馬や春馬の本音をあばき、助川をけしかけるようなことをする。感情の重さを感じながら、1ページずつを読み進めていった。 努力しても叶わないことはあるし、追い続けることにも諦めることにも痛みは伴う。だが、それも全部含めて生きること。走ることも食べることも生きることであって、少しでも後悔のないように、自分の気持ちと向き合うことが大事なのかもしれない。ラストシーンの早馬のモノローグと涙に胸がじんとした。 そして、出てくるごはんがどれも美味しそう。
  • 2026年7月18日
    ギリシア神話
    ギリシア神話
    ジュニア新書というレーベルにふさわしく端的にまとまりつつも、専門家によるエッセンスがぎゅっと詰まった贅沢な一冊。神話世界の成り立ちから神々の逸話、現代の文学への接続などなど、入門にもぴったりの一冊。ギリシア神話の神は人智を超えた力を持ちながらも、嫉妬や愛をむき出しに行動したりして、どこか人間的な色彩を持っている。
  • 2026年7月15日
    夏の体温
    夏の体温
    表題作目当てで購入。病院、夏休み、入院――というワードから感じる仄暗さとは裏腹に、期限付きの交流で爽やかに友情を深める少年のみずみずしい関係が描かれていた。ただ、検査検査に入院という経験を経たせいか、ふたりともが年齢のわりに自分の感情を冷静に見ていて、ものすごく自律的だ。おもちゃ箱をひっくり返すことで心の嵐を鎮める瑛介がいじらしく、去った後にも明るく励ましてくれるような壮太の存在が愛おしい。バッタの死体が届くあたりはすごく小学生男子という感じ。チビだから明るくて面白くなくちゃいけない、なんて、壮太も随分と達観しているのが切ないような。 「魅惑の極悪人ファイル」2人の男女が殻を破って一歩踏み出すようなお話。自分のことよりも、他人のためのほうが行動できるのかも。インテリデブはだいぶひどい悪口に聞こえる。
  • 2026年7月14日
    恋文の技術 新版 (ポプラ文庫)
    実は森見登美彦を初読み。基本的には守田一郎が語り手となる書簡文だけで展開していくのだが、大塚さんとの攻防だとか小松崎くんとのおバカな男の友情だとか、片方の語りだけで豊かに想像させるのはすごい。やたらと登場するおっぱいだとか、ヒネクレ者全開な守田の語りだとかはあんまり好みでないかも…とも思ったが、個人的にも好きで何度か訪れている七尾や能登の情景が描かれているのが好きだった。
  • 2026年7月8日
    西遊記(上)
    西遊記(上)
    読んだことがなかったので。まず、訳文が講談のようにテンポよく語るような調子でサクサク読めるのがすごい。三蔵法師は結構弱音も吐くし狼狽えるし泣くし、孫悟空は無法者の暴れん坊。キャラクターの立ち方が凄まじく、どんどん引き込まれてあっと言うまに読めてしまう魅力がある。続きが楽しみ。
  • 2026年7月4日
    ぼくのいうことを、きかないぼく
    ぼくのいうことを、きかないぼく
    トゥレット症に悩む小学6年生の駿。自分の症状の原因も分からず、周囲からは問題児だと白い目で見られ、家庭も冷え切り、それでもなんでもないようヘラヘラとした仮面を被る駿。自分なんかいなくなりたい、まだ子供なのにそこまで思い詰める姿に、胸が痛む。大雑把で適当だけど懐の深いワタルと、真面目にしっかりと考え、駿を理解しようとする遥斗の存在が大きな救いになる。なんにしても、まずは知ることから。物語としても、読者である子どもたちが学ぶきっかけとしても素晴らしい一冊。 「正解だと思われたいことをする」ってのはまちがい、というワタルの言葉が心に残った。ふたりの友情に救われ、頑なに張り詰めていたお母さんの心もほどける。問題はまだまだあるだろうけど、希望の持てるラストだった。そして、おじいちゃんになった3人のイラストに思わずほろり。
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