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ちゃせん
ちゃせん
@arbata_caj
記録用 小説、新書など
  • 2026年8月11日
    西遊記(下)
    西遊記(下)
    長く続いた三蔵法師一行の旅も、これで終わり。長い長い旅の中で、妖怪との戦いあり、さまざまな人との出会いあり、古典ながら堅苦しさや古臭さがなく、生き生きと個性豊かな登場人物の大活躍に心奪われてしまう。まるで講談を語り聞かせるような君島久子先生の名訳もあって、さながらお話に聞き入る聴衆の気持ちであった。荒くれ者で乱暴者の悟空、食いしん坊で少し抜けている八戒、やや地味なきらいはあるが物静かで実直な悟浄、そして誠実ではあるが意外に臆病で頭の硬いところもある三蔵、現代劇にしても十分なくらいのエンタメ性である。 子供向けに刊行された本ではあるが、大人が読んでも新鮮に面白い。いまこのとき、西遊記をしっかりと読むことができてよかったなあと思う。
  • 2026年8月6日
    永遠の詩(5) 石垣りん
    永遠の詩(5) 石垣りん
    やはり一本通った芯や生きることへの眼差し、力強い言葉など、石垣りんという詩人の立つ姿を見ているようで心に響く。
  • 2026年8月4日
    ぼくらがやりたい10のこと
    児童書。偶然「やりたいことリスト」を作って達成することになった四年生の栄太とゴウ。あまり仲良くもなかった二人だけど、一見強引なゴウが引っ張る形でいろんなことにチャレンジしてみることに。それぞれに抱える親との関係や家庭の悩みも関わりつつ、他のクラスメイトも巻き込みながら「やりたいこと」が広がっていき、二人ともが大きく成長する。親が親として悩む部分にもフォーカスがあたっていて、一方的に悪者になっていないのが個人的に良かった。やりたいことを尊重しつつ、年長者として支えてあげる、そんな大人になりたいものだ。
  • 2026年8月3日
    (新装版)石垣りん詩集
    戦争の時代を生き抜き、父と継母、弟たちを抱えて一家の大黒柱として働きながら詩を書いた石垣りんの詩集。この人の詩は高校生のときのワークかなにかで読んで以来印象に残っているのだが、感情的にならずどこか冷徹な目線で語りながら、抑圧されたものや怒り、生活というものの生々しさ、生きることのグロテスクさのようなものを見据えているような感覚がある。 平易なことばで語られる詩を読みながら、ときどき抜身の刃を押し当てられたようなぞくりとした寒気を覚えたりする。家というものに苦しみ、戦争に苦しみながら、それをこうした形で作品とする底知れない強さ。一読しただけではわからない魅力とおそろしさがある気がした。 このご時世のこの8月に読む意味があった、そんな一冊。
  • 2026年8月2日
    バイ・タイム
    バイ・タイム
    ポストアポカリプス、というと少し違うが、大災厄、高次生命体との衝突により、時の歪み「渦」が発生するようになった時代、妻を失い、残された息子と共に暮らしながら、歪みを正す「整時士」として働く佐藤スバルの物語。 何話かの連作になっているが、歪みの原因となるのは親と離れ難い子の思いであったり、親との関係に悩む子の苦しみであったり、親も知らない子供同士の関係にあったりする。親としてのあり方に悩み続け、息子の成長をどこか遠くに感じながら生きているスバル。作中を貫く親子の在り方や時間というものの捉え方が、夏の鮮やかな色彩のなかでせつなく浮かび上がってくる。劇的になにかが解決するような物語ではないのだが、スバルの関わった子供たちはみな、歪みとの遭遇を経て良い方向に進んでいるような気がする。
  • 2026年7月31日
    記憶の果ての旅
    ただ楽しく遊ぶ毎日を繰り返していた「ぼく」が、ふと疑問を持って旅に出るところから始まる物語。何も覚えていない、知らないこと(というより、忘れていること?)ばかりで、描写の不自然さが後の場面で次々に回収されていく。ゲームのような世界観の中で、明かされる真実は自分が予想していたものからさらにひとひねり、といったものだった。感情をあらわす言葉や自分の名前、生命活動そのものの概念という欠落がどんどん埋まっていく構成だけに、ぼんやりした霧の中から輪郭が浮かび上がってくるような不思議な読み味の小説だった。
  • 2026年7月29日
    西遊記(中)
    三蔵法師一行が西へと旅する道中の物語、いよいよ冒険活劇らしく、さまざまな妖怪との戦いが繰り広げられていて楽しい。三蔵は意外に強情で悟空のことを信用しないし悟空もお師匠様にキレるし、猪八戒はそれなりにいい加減だったりする。静かな沙悟浄が実は一行の良心なのかもしれない。キャラクターの個性が尖りまくっていて、講談や紙芝居のような小気味よい訳文のテンポも手伝いするすると読める。
  • 2026年7月26日
    スタートライン 風のなかへ
    児童書。ひょんなことから陸上クラブに入った「ぼく」こと逸輝と親友の「みずくん」こと水木くん。特に興味があったわけでもないけれど、走ることの魅力に気づき、体も心も大きく成長していく。努力しても挫折することはあるけれど、腐らずにやりつづけることにもきっと価値はある。おじいちゃんを始めとした家族の見守りやみずくんとの爽やかな友情が心地よい一冊。今年の読書感想文の課題図書である「まだまだここから」でも思ったが、酒井以さんのイラストは子どもらしい可愛らしさやまっすぐさ、温かさを感じて素敵。
  • 2026年7月24日
    タスキメシ
    怪我で陸上を辞めようとしている眞家早馬、才能あふれる弟の春馬、共に陸上部で3年間走ってきた助川亮介、早馬と出会い、ともに料理をすることになった料理研究部の井坂都。陸上と料理をめぐる高校生たちの青春と葛藤の物語。早馬が弟に抱く複雑な感情も、兄として立っていたいという気持ちも、どっちつかずな自分の置き場を求めたい気持ちも、複雑で重たくて、そしてリアルだ。春馬も助川も、早馬があっさり去ってしまいそうなことを悔しく思っているが、なかなか本音をぶつけられない。都は都の思惑で、早馬や春馬の本音をあばき、助川をけしかけるようなことをする。感情の重さを感じながら、1ページずつを読み進めていった。 努力しても叶わないことはあるし、追い続けることにも諦めることにも痛みは伴う。だが、それも全部含めて生きること。走ることも食べることも生きることであって、少しでも後悔のないように、自分の気持ちと向き合うことが大事なのかもしれない。ラストシーンの早馬のモノローグと涙に胸がじんとした。 そして、出てくるごはんがどれも美味しそう。
  • 2026年7月18日
    ギリシア神話
    ギリシア神話
    ジュニア新書というレーベルにふさわしく端的にまとまりつつも、専門家によるエッセンスがぎゅっと詰まった贅沢な一冊。神話世界の成り立ちから神々の逸話、現代の文学への接続などなど、入門にもぴったりの一冊。ギリシア神話の神は人智を超えた力を持ちながらも、嫉妬や愛をむき出しに行動したりして、どこか人間的な色彩を持っている。
  • 2026年7月15日
    夏の体温
    夏の体温
    表題作目当てで購入。病院、夏休み、入院――というワードから感じる仄暗さとは裏腹に、期限付きの交流で爽やかに友情を深める少年のみずみずしい関係が描かれていた。ただ、検査検査に入院という経験を経たせいか、ふたりともが年齢のわりに自分の感情を冷静に見ていて、ものすごく自律的だ。おもちゃ箱をひっくり返すことで心の嵐を鎮める瑛介がいじらしく、去った後にも明るく励ましてくれるような壮太の存在が愛おしい。バッタの死体が届くあたりはすごく小学生男子という感じ。チビだから明るくて面白くなくちゃいけない、なんて、壮太も随分と達観しているのが切ないような。 「魅惑の極悪人ファイル」2人の男女が殻を破って一歩踏み出すようなお話。自分のことよりも、他人のためのほうが行動できるのかも。インテリデブはだいぶひどい悪口に聞こえる。
  • 2026年7月14日
    恋文の技術 新版 (ポプラ文庫)
    実は森見登美彦を初読み。基本的には守田一郎が語り手となる書簡文だけで展開していくのだが、大塚さんとの攻防だとか小松崎くんとのおバカな男の友情だとか、片方の語りだけで豊かに想像させるのはすごい。やたらと登場するおっぱいだとか、ヒネクレ者全開な守田の語りだとかはあんまり好みでないかも…とも思ったが、個人的にも好きで何度か訪れている七尾や能登の情景が描かれているのが好きだった。
  • 2026年7月8日
    西遊記(上)
    西遊記(上)
    読んだことがなかったので。まず、訳文が講談のようにテンポよく語るような調子でサクサク読めるのがすごい。三蔵法師は結構弱音も吐くし狼狽えるし泣くし、孫悟空は無法者の暴れん坊。キャラクターの立ち方が凄まじく、どんどん引き込まれてあっと言うまに読めてしまう魅力がある。続きが楽しみ。
  • 2026年7月4日
    ぼくのいうことを、きかないぼく
    ぼくのいうことを、きかないぼく
    トゥレット症に悩む小学6年生の駿。自分の症状の原因も分からず、周囲からは問題児だと白い目で見られ、家庭も冷え切り、それでもなんでもないようヘラヘラとした仮面を被る駿。自分なんかいなくなりたい、まだ子供なのにそこまで思い詰める姿に、胸が痛む。大雑把で適当だけど懐の深いワタルと、真面目にしっかりと考え、駿を理解しようとする遥斗の存在が大きな救いになる。なんにしても、まずは知ることから。物語としても、読者である子どもたちが学ぶきっかけとしても素晴らしい一冊。 「正解だと思われたいことをする」ってのはまちがい、というワタルの言葉が心に残った。ふたりの友情に救われ、頑なに張り詰めていたお母さんの心もほどける。問題はまだまだあるだろうけど、希望の持てるラストだった。そして、おじいちゃんになった3人のイラストに思わずほろり。
  • 2026年7月4日
    かみさまにあいたい
    かみさまにあいたい
    心に傷を抱えたふたりの少年の冒険と友情のお話。おばあちゃんについてしまった嘘を後悔し続けている雄一と、寂しさから問題行動ばかり起こしている竜也。「天国に行きたい」だなんて、小3の子が願うにはあまりに重いのでは。神さまの正体はきっとあの人なんだろうけど、そこは明言されず。さらりと読めて、心の機微も描かれていて良い一冊だった。 やはり、酒井以さんのイラストはすてきだ。
  • 2026年7月2日
    リトアニアを知るための60章
    必要に迫られて勉強することになったので、入門書的に一冊。このシリーズは様々な分野の専門家が端的にまとまった記事を書いているので、地域研究や勉強の入門にはピッタリ。学生時代リトアニア語は一年ほど履修していたが、何もかも忘れていたので、新鮮に面白く読んだ。文化や歴史の豊かさ、自然の美しさ、バルトもまた奥深い世界である。
  • 2026年6月21日
    ぼくはなにいろ
    それぞれに生きづらさを抱えた人々の関わり合いを群像劇的に描く一冊。人にはいえない傷跡を抱えた人、自分を見失い、目的や夢を持たずに生きている人、それぞれが傷つきやすすぎるほどに傷つきやすく、繊細で、それでいて優しい。登場人物の中では、はっきりした夢や目的を持たないことにコンプレックスを抱えつつ生きている孝志朗が一番好きだったかも。
  • 2026年6月18日
    竜の医師団5
    竜の医師団5
    舞台は南の国、ガナラージャへ。こちらのモデルはインドあたりだろうか。 イヅルを舞台とした前作以降、カランバスとは異なる風土や文化を持つ国が本格的に登場し、世界観がグッと広がり始めている。人だけではなく竜の登場人物(人物?)も増え、お馴染みのディドウスとチューダの父子に加え、お姉さん子竜のシストラ、その母で淑女と呼ばれるリエーデ、さらに母のカテンカなど、実に個性豊かな竜たちがひしめき合う。豊かなガナラージャを舞台に、そこにもやはり存在する差別、そして竜の医療そのものを否定する過激な一派の影、リョウの記憶、レオとのギクシャク……と、不穏のタネがあちこちに撒かれたまま、とりあえずのチューダの危機を脱した美しい夜の場面で幕切れとなる。猛烈に続きが気になったところだが、幸いにまさに今日、続きの6巻が発売になった。世界観もキャラクターもますます奥行きを増して、読み進めるのがとても楽しい一冊である。
  • 2026年6月15日
    まだまだここから
    酒井以さんによる表紙の優しい絵に惹かれて。水泳の特訓生になれなかった蓮が、違うプールで新しい友達と出会い、練習を重ねながら、自分自身の気持ちに向き合っていく。自分とは違って特訓生になれた弟への嫉妬や、なかなかうまくいかない焦りをしっかりと見つめ、ひと夏の間に大きく成長した蓮の姿、陽太や海音との温かな友情に頬がゆるんだ。小学生向けのお話だけど、がんばったのにうまく結果が出せなかった悔しさは大人でも覚えがあるはず。疲れた大人の心にもしみる一冊。 健康のためにプールに行こうかと思っている自分にとってタイムリーなお話でもあった。
  • 2026年6月15日
    理由あって冬に出る
    初読みの作家さん。怪奇現象の正体は……というところから、思わぬ結末、そしてさらなる驚きが、という何段構えかのサプライズが待っていた。マイペースに周囲を振り回している伊神さんではあるが、読んでいてそこまでめちゃくちゃ変人という印象にまではならなかったのはなぜだろう。プロローグから挿話の記述にまんまと騙されたわけだが、ミノのやったことは(やりかたは良くなかったにしろ)否定されるべきものではないのではないかと思うし、悪意に負けないでほしいと思った。
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