Anna福 "日本人が立ち返る場所" 2026年6月9日

Anna福
Anna福
@reads--250309
2026年6月9日
日本人が立ち返る場所
日本人が立ち返る場所
内田樹,
養老孟司
面白すぎて付箋がいっぱいだ。 内田樹の「『そういえば、こんな話を思い出した』というのも、とても重要な知性の働きだと思います」という一文に、ほっとする。私は本を読んでいると、ある一文で昔読んだ本を思い出したり、気になったことを調べ始めてしまうからだ。 実際、この本を読みながら、昔平安時代小説で感じていた小さな違和感を思い出した。爺さんなのに「牛飼い童なんとか丸」と呼ばれている人物がいて違和感があったが、なんと、内田先生が偶々説明してくれている…! 牛飼い「童」は、野生と人間世界のあいだに足をかけるトリックスター的存在を示す名札だそう。 思いがけず、長年喉に引っかかっていた小骨が取れた気分だった。 養老先生の話では、パレスチナの国境線の出っ張りを調べると、その中に良い井戸があるというエピソードが印象に残った。いい井戸は全てイスラエル側。 理念や建前ではなく、「いい井戸は欲しい」という人間の情念が国境線の形に表れている、という見方に唸った。 また、日本人は最悪の事態を前提に制度設計するのが苦手だという話には思わず吹き出し、そして怖くなる。 天災の多い国なのに「そんなことは起きないだろう」で進め、実際に起きると「想定外だった」と言う。原発事故もそうだし、仮設住宅が被災したというニュースを見たときも唖然としたが、結局「想定外」とだと誰も責任を取らない。 一冊を読みながら、昔の読書体験や現在の社会問題が次々につながっていく。内田先生のいう「そういえば」は、お二人の、まさにそういう知性の働きなのだと思った。
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