蛸足配線 "わたしたちの中絶" 2025年3月28日

蛸足配線
@nekoai30
2025年3月28日
わたしたちの中絶
わたしたちの中絶
大橋由香子,
石原燃
第27章 わたしは何も悪いことはしていない 取り除いた妊娠組織を見せられて、「これどうしますか?」って聞かれたんです。(中略)追加課金一〇〇〇円で水子供養ができるって言うんです。水子供養しないなら、普通に可燃ゴミとして捨てますって言われました。(中略)オプション感がすごかったし、かえって「命の尊厳ってなに?」と思ってしまって。とにかく自分を守ることを優先しようと思って、ゴミでいいです、と答えたんです。(p232-233) 出産は良いことで中絶は悪いこと、という単純な図式に基づいた語りが為されるとき、女性の体や意思は重要視されない。所属する社会のために産むことが善だとされているから、それに反して産まない選択をすることが悪とされるのだろうか。組織を維持する道具としての女体から生み出される子もまた将来的に道具として機能することを期待されている。道具が道具を産み続けることを賛美する場であっても、人命は尊くかけがえのないものだという建前があれば多くの人は疑問を抱かず繁殖できる。道具としての機能を根拠に尊ばれるのだとしたら、役に立たない体に尊厳は認められない。この社会で、人命は無条件に尊いものではないらしい。
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