704h "江戸川乱歩傑作選" 2026年6月12日

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@704h
2026年6月12日
江戸川乱歩傑作選
読み終わった。 文字通り「傑作選」だった。収録されているのは初期の作品らしいが、文豪の凄味をひしひしと感じる。 どの作品も奇人を魅力的に描いている。探偵である明智小五郎などはあっさりとした人間であるのに対し、猟奇的な犯人の犯罪に対する執着心の描き方が素晴らしかった。人生の退屈を埋めるために妄念に自らのめり込んで行く様は、犯行の残虐性や倫理観は抜きにして、生きづらさを感じている人にとても魅力的に映るだろう。小説という嘘のなかでこそ成り立つ美しさがあると思う。 江戸川乱歩も幼い頃は退屈と戦いながら、文学の世界に自分の場所を見つけたのではないだろうか。そういった意味では、話のグロテスクさの奥に人間的な温かみがあって、これこそ人間讃歌なのだと考えさせられた。 一方で悪はやはり悪なのだとバッサリと切り捨てている。『人間椅子』では、奇人に同情しかけそうになったところでの、奥方の唯一のセリフ「おお、気味のわるい」に全てが集約されおり、なんだか笑ってしまう。狂気に肩入れし過ぎないこのバランス感覚も、乱歩の愛嬌なのだと思う。次に読む予定の『江戸川乱歩名作選』も楽しみ。
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