北村有(きたむらゆう) "いい子のあくび" 2026年6月12日

いい子のあくび
小説や映画ドラマなど物語に触れるとき、これは私のために書かれた話だ、私がここにいると思う瞬間があるけど、この『いい子のあくび』にはそれが詰まっていた。私がここにいる、これは私だ。 実際に私は駅のホームや電車内なんかで、ずっとずっとイライラしてきた。歩きスマホは危険だとこれだけ言われているのにやめない人たち、駆け込み乗車をする人たち、地面や床に書かれた矢印を無視して利己的に歩きまわる人たちに。 この主人公と同じように、割に合わないと何度も何度も考えてきた。しっかりと前を向いて、してはいけないことをせず、守るべきことを守って生きている側の私たちが、なぜ、と思ってきた。損をしている、割に合わない、損をしている。負わされた損が回収されることはない、自ら体当たりでぶつかっていかない限りは。 この背負わされている感を、人はどうやってやり過ごしているんだろう。やり過ごさずに抱えているんだろうか。そんな感覚なんてないものとしているか、当たり前だと思って追いやっているんだろうか。大人な態度。
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