pamo "ウンラート教授 あるいは一暴..." 2025年3月24日

pamo
pamo
@pamo
2025年3月24日
ウンラート教授 あるいは一暴君の末路
ウンラート教授 あるいは一暴君の末路
ハインリヒ・マン,
今井敦
ドイツ版『痴人の愛』。町中から嫌われ「ウンラート(汚物)」のあだ名で嗤われている偏屈老教師が、美しい女芸人と出会い、孤独な愛に溺れながらも世界へ復讐していく話。『痴人の愛』は恋愛が主眼だったが、『ウンラート教授』は主人公による復讐が軸足になっている。 人を愛さず、人に愛されないゆえに人間嫌いになり、人類を憎み、自分をバカにした(と思い込んでいる)生徒たちを破滅に追い込まねば気が済まない、哀しき主人公。 時代と地域柄、登場人物たちの見ている世界があまりに狭くて全てがみみっちいのは玉に瑕だけど、自分を愛せないが故にどんどん破滅へと奔走してしまう主人公は、現代でいう「無敵の人」そのもので共感なしに読めない。人類は何年経ってもこの問題を解決することはできない。 映画『哀れなるものたち』がフェミニズムを軸に哀れなる者たちを描いたとすれば、こちらはファシズムを軸とした哀れなる者たち。 末尾の解説を読むと、強権的な学校教師の問題や実在の事件など当時の社会をそのまま反映した部分がかなり多いらしく、当時の雰囲気を知るのにも良い一冊。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved