

pamo
@pamo
趣味は読書です。
- 2025年5月7日もしもし下北沢よしもとばなな読み終わった感想図書館本このアプリで知って、気になって読んだ。 父親が、不倫相手と心中した。 取り残された娘と母の、再生の物語。 序盤は母親との会話がくどいし、終盤は15年前の価値観って感じだしで両手を上げて賞賛することは難しいのだけど、しかし現代の女性作家の小説からしか得られない養分がある。 ひとつひとつの展開には納得がいかないのに、最後の晴れやかな心情は自然とするりと心に入ってくる。不思議だ、どうしてこんなふうに読者の心を動かせるのだろう。
- 2025年5月6日人間の土地サン=テグジュペリ心に残る一節旦那……わしにも土を掘るのが苦労だったことがござんした。リューマチで足が痛かったりすると、わしもこの奴隷仕事を呪いましたよ。ところがどうでしょう、このごろでは、わしは土を掘って掘って掘りぬきたいほどですわい。土を掘るってことがわしには、いい気持なんでさあ! 土を掘っていると、気が楽でさあ! それにわしがしなかったら、だれがわしの樹木の手入れをしてくれましょう? (p.58)
- 2025年5月4日私の最後の羊が死んだ河崎秋子読み終わった感想図書館本図書館で偶然出会い、知られざる「羊飼い」という職業について知れるかも!と手に取ってみた本。 読み始めると、ちょっと肩すかし。羊飼いや羊という生き物についての描写はかなり淡白で、あまり具体的なイメージが湧かない。冒頭数ページでしばらく放置。 図書館の返却期限が迫ったので仕方なく読み始めると、どんどん面白くなっていく…! 大学卒業とともにニュージーランドのワーホリで住み込みの羊飼い実習、20代は実家の酪農業と羊飼いのダブルワーク、そして父親の介護、小説家になるためのチャレンジ…。 めまぐるしく、充実しながらもしんどい30代。 先が気になって一気に読んでしまった。 自分自身も同じくらいの年齢で転機を経験してきたので、「やっぱりみんなそうなんだ」という安心感と、「今後自分にもこういうことがあるかもしれない」という心の準備ができる。 夢に向かって突き進んだり、無理をして体や心を壊したり、なにかを辞めた経験がある人に刺さること間違いなし。 自分も果敢にチャレンジしていこう、とパワーをもらえる一冊。本棚に並べてお守りにしたい。
- 2025年4月18日ケインとアベル(上巻)改版ジェフリー・アーチャー,永井淳読み終わった感想読了。第一次世界大戦から冷戦期までの歴史とともに、アメリカの富裕層生まれで銀行家として無双するケイン、ポーランドでドイツ・ロシア軍に故郷を蹂躙され身一つでアメリカへ渡ったアベルの、数奇な運命。 プライドよりも大事なものが何もない2人の行動にはうんざり。 家族まで巻き込んで自分で自分を不幸にするのは見てられない。 エンタメ作品として、また歴史スペクタクルとして引き込まれる文章と構成力には脱帽するが、半沢直樹の「倍返しだ」を超スケールでやっている感じで、「世の中や人生には他にももっと素晴らしいものや大切なことってあると思うよ…」って感じ。
- 2025年4月10日読み終わった感想一気読み。滋賀母親殺害事件の背景にあった、壮絶な教育虐待。 母親を殺した娘の視点で語られるので、母親、父、祖母、教師の視点も今後の取材等で知りたいと思った。 娘が経験した地獄はもちろんのこと、娘の手を引いてこの地獄へと突っ走っていった母親自身、相当にしんどい思いをしていたに違いない。なぜ母親はこうも不幸へと邁進せねばならなかったのか。何が彼女をそうさせたのか。 別居していた父親はどのような思いだったのか、そして今、心境の変化はあったのか。 教師は、どのような思いで家出してきた教え子を迎えたのか。 「私か母のどちらかが死ななければ終わらなかった」というその地獄は、周囲の人間にとっても、そうだったのではないだろうか。皮肉にも娘が母親に手をかけたことで、周囲の人間も含めて人生を次のステップに進める契機となったようにも見えるし、娘が母親から解放されたのと同時に、母親も、ある意味で長年の苦しみから解放されたのだと思えてならない…。 娘が大学に進学した数年間だけは母娘にとって平穏な時期だったのだが、娘を虐待するという重労働から解放されて一息ついた母親がやることといえばツムツムやLINEゲームしかない…というところに、かなり深い闇を感じた。 そして、環境のせいとはいえ人を信頼せず平気で嘘をついたり軽率な不正を働く娘が、医者にならなくて良かった、とも思った…。
- 2025年4月6日
- 2025年3月31日死者は嘘をつかない (文春文庫)スティーヴン・キング,土屋晃読み終わった感想図書館本読了。ホラーの帝王、スティーヴン・キングの作品を初めて読んだ。 死者の幽霊が見える子ども…という『シックス・センス』そのままの設定だが、こちらの場合は「死後しばらくは、死者と会話できる」「死者は真実しか語らない」という設定が追加されている。 この少年の能力を唯一知る母親が、切羽詰まってその使い道を思いついてしまい、彼の不幸が始まっていく…という話。 カッコつけたアメリカンな語り口調が鼻につくけど、テンポの良い映画のようにシーンが次々と変わっていくのでどんどん進んでいける。 いくつかの山場を超えてクライマックスへ高まっていく展開は、どっしりと構えたレジェンドの風格を感じさせる。 70代にしてこのエンタメ性。年をとっても湿っぽくならずくどくど語らず、90分にまとまった良い映画を一本観たようなすっきりとした読後感。 次は映画未視聴の『ミザリー』を読みたい。 いつか読みたいと思いながら本を手に取ったことがなかったので、この作品をおすすめコーナーに置いてくれた図書館に感謝。
- 2025年3月25日死者は嘘をつかない (文春文庫)スティーヴン・キング,土屋晃読み始めた
- 2025年3月25日
- 2025年3月24日ウンラート教授 あるいは一暴君の末路ハインリヒ・マン,今井敦読み終わった感想ドイツ版『痴人の愛』。町中から嫌われ「ウンラート(汚物)」のあだ名で嗤われている偏屈老教師が、美しい女芸人と出会い、孤独な愛に溺れながらも世界へ復讐していく話。『痴人の愛』は恋愛が主眼だったが、『ウンラート教授』は主人公による復讐が軸足になっている。 人を愛さず、人に愛されないゆえに人間嫌いになり、人類を憎み、自分をバカにした(と思い込んでいる)生徒たちを破滅に追い込まねば気が済まない、哀しき主人公。 時代と地域柄、登場人物たちの見ている世界があまりに狭くて全てがみみっちいのは玉に瑕だけど、自分を愛せないが故にどんどん破滅へと奔走してしまう主人公は、現代でいう「無敵の人」そのもので共感なしに読めない。人類は何年経ってもこの問題を解決することはできない。 映画『哀れなるものたち』がフェミニズムを軸に哀れなる者たちを描いたとすれば、こちらはファシズムを軸とした哀れなる者たち。 末尾の解説を読むと、強権的な学校教師の問題や実在の事件など当時の社会をそのまま反映した部分がかなり多いらしく、当時の雰囲気を知るのにも良い一冊。
- 2025年3月20日女生徒太宰治読み終わった心に残る一節引用:私たち、愛の表現の方針を見失っているのだから、あれもいけない、これもいけない、と言わずに、こうしろ、ああしろ、と強い力で言いつけてくれたら、私たちみんな、そのとおりにする。誰も自信が無いのかしら。(中略)正しい希望、正しい野心を持っていけない、と叱って居られるけれども、そんなら私たち、正しい理想を追って行動した場合、この人たちはどこまでも私たちを見守り、導いていってくれるだろうか。
- 2025年3月20日女生徒太宰治読み終わった心に残る一節引用:みんな、なかなか確実なことばかり書いている。個性の無いこと。深味の無いこと。正しい希望、正しい野心、そんなものから遠く離れていること。つまり、理想の無いこと。批判はあっても、自分の生活に直接むすびつける積極性の無いこと。無反省。本当の自覚、自愛、自重がない。勇気ある行動をしても、そのあらゆる結果について、責任が持てるかどうか。自分の周囲の生活様式には順応し、これを処理することに巧みであるが、自分、ならびに自分の周囲の生活に、正しい愛情を持っていない。本当の意味の謙遜がない。独創性にとぼしい。模倣だけだ。人間本来の「愛」の感情が欠如してしまっている。お上品ぶっていながら、気品がない。
- 2025年3月20日三体3 死神永生 下ワン・チャイ,光吉さくら,劉慈欣,大森望,泊功心に残る一節引用:そう、いったいなにを言えるだろう。文明は五千年にわたって狂うように走りつづけてきた。たえまない進歩が進歩をさらに後押しして加速させ、無数の奇跡がさらに大きな奇跡を生み出して、人類は神にもひとしい力を持った。だが結局のところ、ほんとうの力を握っているのは時間だった。足跡を残すことは、ひとつの世界をつくることよりもむずかしい。文明の終焉に際して、彼らにできることと言えば、人類がまだ赤ん坊だったはるか過去にやっていたのと同じことだけだった。 石に字を掘る。
- 2025年3月18日ウンラート教授 あるいは一暴君の末路ハインリヒ・マン,今井敦読んでる心に残る一節引用:本来の女芸人フレーリヒが、ようやく今、彼の前に座っていた。彼は、女芸人フレーリヒが生まれる場に居合わせたのであり、そのことに今初めて気づいたのだった。彼は一時のあいだ、美と欲望と魂をこしらえる厨を覗いたのだ。ウンラートは幻滅すると同時に、その世界の事情に通じた人間となった。「こんなものだったのか?」と考えたあとすぐに、「これはまた凄いものだ!」と考えた。心臓はドキドキ鳴った……一方で女芸人フレーリヒは、彼の心臓を高鳴らせた塗料を、布を使って両手からぬぐった。(p.140)
- 2025年3月18日
- 2025年3月18日西の魔女が死んだ梨木香歩かつて読んだミュージカル「ウィキッド」を見て思い出した一冊。 当時は、祖母を「西の魔女」と呼んでいるとか、母親を亡くして「西の魔女が死んだ」って言うとか、そういう劇画っぽい設定に「んなわけあるかい」とノリきれなかったけど、『オズの魔法使い』をちゃんと知った後ならもう少し乗れるかも。 そして祖母も年老いてきた今なら、もっと自分の物語として読めるかもしれない。
- 2025年3月17日サラバ!(上)西加奈子読み終わった感想魂が震える長編小説。エジプトで幼少期を暮らした主人公の少年の、現地の少年との友情、日本での思春期、大人になってからの苦悩。 注目を集めたくて変人ぶってしまう姉。「写真を撮ってもらった時、「次は私が撮るね」とは決して言わないタイプ」の母。近所の聞き上手なおばあさんが、いつしか独自の宗教と化していく様。青年期までは甘いマスクで苦労知らずだった主人公が、アレによって転落していく様。 どれもぶっ飛んだ設定のようでいて、自分や周りの人にすごくリンクする。登場人物たちがどれも愛おしくなってしまう。 何度読み返しても胸が熱くなる。ままならない人生を苦しみながら歩んでいく現代人の、指針のような、お守りのような、旗のような作品。
- 2025年3月17日夜と霧ヴィクトル・エミール・フランクル,ヴィクトール・E・フランクル,池田香代子心に残る一節引用:ラテン語の「フィニス(finis)」には、よく知られているように、ふたつの意味がある。終わり、そして目的だ。(暫定的な)ありようがいつ終わるか見通しのつかない人間は、目的をもって生きることができない。ふつうのありようの人間のように、未来を見すえて存在することができないのだ。(p.119)
- 2025年3月17日イスラームの日常世界片倉もとこ心に残る一節引用:人間は強いものであると考える近代西欧社会では、人間が自然に挑戦し、それを征服できるとした。(p.35) 日本人にとって自然はすべてを与えてくれる母のような存在であり、人間がどんなに自然を破壊しても何とかなるだろう、水に流してもらえるだろうと思いこんでいるふしがある。〜中略〜 イスラームにおいては、自然と人間のあいだには階層性はなく、森羅万象は人間と対等の立場で存在している。(中略)人間が強者として自然を支配するのではない。人間にできることは、まわりの自然と共存することである。自分自身も、大自然の一部として、仲間入りさせてもらうことぐらいしかできない。(p.39) うーん、さすが砂漠の宗教。
- 2025年3月17日イスラームの日常世界片倉もとこ心に残る一節引用:人間が弱い存在であることを、いさぎよく認める。人間は、本来悪でも善でもないが、弱い存在ではある。したがって誘惑にまけやすくなるような状況をつくらないことにする。不特定多数の男女が肌をみせて接触していると、弱い人間のこと、乱れるにきまっているから、男も女も、手首、足首までの長い衣服をつけることにする。(p.25) 結婚も一種の社会契約である。人間の弱さをはじめから認め、相手を永遠に愛せるほど人間は強くない。からだがうつろうように、心もうつろうことを最初から勘定にいれておく。「離婚したときは、いくら払います」というような項目が、結婚の契約にはじめから入っている。(p.27)
読み込み中...